エルダー2019年7月号
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エルダー57湯浅和夫 編著/内田明は美る子こ、芝田稔とし子こ 著/生産性出版/1800円+税かのうひろみ 著/日本経済新聞出版社/1400円+税樋口 進、廣ひろ 尚ひさ典のり 編/南なん山ざん堂どう/2200円+税「アディクション」とは、不健康な習慣への4めり込む4444状態を指す。アルコール依存症をはじめとした依存症・アディクションは、個人の問題にとどまらず、勤きん怠たい不ふ良りょうなどのかたちで職場に悪影響をおよぼすこともある。産業保健の現場のみならず、職場全体で取り組むべき課題といえるだろう。本書は、産業医や産業保健スタッフ、人事労務担当者向けに、依存症・アディクションに関する知識と対策を網羅した解説書として刊行された。第1章では、総論として依存症・アディクションの概念や職場における課題などを明解に整理。第2章は職場におけるアルコール問題、第3章は職場における喫煙問題、そして第4章はさまざまな依存症として、インターネット(スマートフォン)依存やギャンブル依存、薬物依存を取り上げている。巻末の資料には、依存症・アディクションへの対応が可能な医療機関リストと回復施設リストが掲載されており、万一の場合に役立つ情報が整理されている。本書は「『はたらく』を支える!」シリーズの第4弾。専門家と職場の間の橋渡しを目的とした好企画なので、高齢労働者の健康問題も取り上げられることを期待する。著者のかのうひろみさんは、宮崎市にある小さな着ぐるみ制作会社「キグルミビズ」の代表取締役。同社の従業員はすべて女性で、育児や介護などの事情を抱えている人もいる。数年前までは残業や休日出勤があたり前で、これでは続けられないと辞めていく人が多くいた。悩んだ著者は、「人生の時々で、働ける時間は違って当然。働き続けることをあきらめなくてもよい職場でありたい」と一念発起。まずは週1回のノー残業デーからはじめ、勤務時間の見直し、休みづらい雰囲気をなくすための有休カレンダー導入など、小さな工夫を積み重ね、ワーク・ライフ・バランスを実現した。本書は、著者と同社の歩みを綴った一冊である。2018年「新・ダイバーシティ経営企業100選」で経産大臣表彰を受けるなど、同社はいま、働き方改革のモデル企業として注目されている。著者は、みやざき女性の活躍推進会議共同代表を務めるなど、経営者としての自らの経験を女性が働きやすい企業づくりの取組みにも活かしている。「何かをごまかしたり、面倒なことから逃げたりすることは、けっきょく進化のスピードを落とすことになる」などの本書の言葉も、働き方改革の手がかりになる。AI(人工知能)やビッグデータ、ロボットを活用してさまざまな効率化を図り、従来の常識では考えられなかった目からウロコの取組みや施設が、物流業界に次々と生まれている。「運びたいのに運べない」という物流危機、宅配危機を克服するための最先端の取組みである。本書は、これらの状況を、荷主、物流業者、行政における最前線の動きとともに紹介し、物流業界の将来を描き出す。物流危機の正体、物流危機に立ち向かう行政・経済界の動き、「運べない危機」の克服に乗り出した荷主企業、変革を迫られる物流業界、「AI」、「IoT」、「ロボット」が物流を変える、無人化を目ざす「次世代型物流センター」などを取り上げている。物流危機をもたらしているのは人手不足であり、新たな取組みは「無人化」が柱の一つとなっている。しかし同時に、長時間労働の改善、女性や高齢者を含む多様な人材が活躍できる労働環境の実現といった施策も進められている。「物流を制する者が市場を制す」という言葉を聞くが、この業界でいまどのような労働環境の整備が進められているのか。あるいは、将来どのような職場環境が実現されていくのか。興味深い一冊である。「はたらく」を支える!職場×依存症・アディクション幸せな着ぐるみ工場あたたかいキャラクターを生み続ける女子力の現場「物流危機」の正体とその未来時代の変化を勝ち抜く処しょ方ほう箋せん職場全体として取り組むべき課題としてアプローチだれもが働き続けることをあきらめなくてもよい職場を実現活躍できる労働現場の実現に向けて進む、物流業界の最前線を紹介

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