エルダー2019年7月号
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2019.762オリジナルの沖田ギターを製作中。塗装して仕上げる前に弦の両端の支点になるナットやサドルというパーツを調整、弦を張り、音を出して様子をみる「大学の友人が就職活動で忙しくしているとき、私は、人生についてあれこれ考え、『ネクタイは締めない! 手に職を持とう!』と決めたのがこの道に入るきっかけです」と沖田さん。ギターを弾いていたこともあり、ギター製作工房を訪ね歩き、数軒目で「じゃあ、来てみたら」といわれて入房した。製作家(職人)として入ったものの研修などはいっさいなし。「昔気質の職人の世界ですから、最初から技術なんて教えてもらえませんし、肝心なことは、なおさらやらせてもらえませんでした。下働きをしながら、見よう見まねで覚えていきました」ところが、入って3年くらいで工房が閉鎖されてしまった。「そこで、『よし! 自分でやろう』ということになったのです」自分の工房を立ち上げてから、楽器店回りの営業も行うことに。「これはえらい世界に入っちゃったな」と思ったこともあったというが、支援者も現れ、次第に修理の仕事が増えていった。「修理技術は独学です。ただ、製作という基盤があるので、こうしたらよいのではないかというアイデアが出てきます。そして、試行錯誤のなかで、これが最もよいという方法を見つけていきました」「沖田式」修理方法で強度と美観の両方をかなえるギターの破損原因は、大きく分けて二つある。一つは経年劣化。もう一つは事故。「長く使っていると、何もしなくても、割われ、剥はがれ、反そりなどが出てきます。ネック折れは、ギターを倒すなどの事故によるものです」ネック折れなどの修理は、木材を薄くスライスした板を何層にも張り合わせる「沖田式」と呼ぶ方法で行う。「強度と美観を両方ともかなえ「お客さまの要求にとことん応え、満足してもらえるよう修理。自分の実現したいことを最大限行って、製作しています」

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