エルダー2019年8月号
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2019.88を目的として実施された、高齢・障害・求職者雇用支援機構(2018)『継続雇用制度の現状と制度進化―「60歳以降の社員に関する人事管理に関するアンケート調査」結果より―』を利用して、高齢社員の人事管理の現状と課題を、定年制の状況別に、現役正社員の人事管理との継続性の観点から紹介しよう。なおアンケート調査では、回答企業を定年制の状況別に以下の三つ(定年年齢64歳以下、かつ継続雇用制度で雇用上限年齢が65歳以下の企業〈以下、「雇用確保措置企業」〉2434社、定年年齢64歳以下、かつ継続雇用制度で上限年齢が66歳以上の企業〈以下、「継続雇用66歳以上企業」〉533社、定年制度なし、または定年年齢65歳以上の企業〈以下、「65歳以上の定年企業」〉316社)のタイプに分けている。人事管理の整備状況を紹介する前に、本稿では人事管理の「何」を見るのか、あらかじめ着眼点を示しておこう。人事部門が設計する人事管理は、「社員(雇用)区分制度」※1と「社員格付け制度」※2からなる基盤システムとサブシステムから構成されている。サブシステムは大きく分けて以下の3分野からなっている。第一は、雇用管理である。職場や仕事に人材を供給するための管理機能をになう「採用」、「配置・異動」、「能力開発」および「雇用調整・退職」が該当する。第二は、労働条件管理である。社員の働く環境を管理する機能をになう「労働時間管理」および「安全衛生管理」が含まれる。第三は、報酬管理である。社員に給付する報酬を管理する機能をになう「賃金管理」、「昇進・昇格管理」、「福利厚生」がある。さらに、「人事評価」は基盤システムとサブシステムをつなぐ連結ピンの役割をになっている。以下では、これらのキーワードのうち「社員格付け制度・社員(雇用)区分制度」、「配置・異動」、「労働時間管理」、「人事評価制度」、「報酬管理(昇給、賞与、一時金、昇格)」の五つのポイントに絞って、60歳代前半層の人事管理の特質を紹介する。60歳代前半層の人事管理の特質2(1) 社員格付け制度・社員(雇用)区分制度の設定状況社員格付け制度は、従業員の序列を決定する仕組みであるが、何を基準にして序列を決めるかによって制度の形態が異なる。「仕事の重要度」に基づく『職務分類制度』と、「ヒトの能力」に基づく『職能資格制度』が代表的な格付け制度である。一般的に現役正社員には、職能資格制度が適用されている。一方、アンケート調査結果によると、高齢社員の格付け制度を「導入している」企業は定年制の状況にかかわらず、3割以下にとどまる。その内訳は「65歳以上の定年企業」では、現役正社員の社員格付け制度を「すべての高齢社員」に適用している企業が7割強を占めている。これに対して、「雇用確保措置企業」では、現役正社員の社員格付け制度を「すべての高齢社員」に適用している企業が26・8%、「一部の高齢社員」に適用している企業が6・4%にとどまり、現役正社員と異なる制度を適用している企業が65・5%に及んでいる(図表1)。他方、「社員(雇用)区分制度」については、賃金テーブルの設定状況からみると、「設定している」企業は定年制の状況にかかわらず、約4割にとどまるが、その内訳は「65歳以上の定年企業」では、現役正社員の社員区分制度を「すべての高齢社員」に適用している企業が約7割を占めている。これに対して、「雇用確保措置企業」では現役正社員の社員区分制度を「すべての高齢社員」に適用している企業が16・5%、「一部の高齢社員」に適用している企業が5・8%にとどまり、現役正社員と異なる制度を適用している企業が77・0%に及んでいる(図表2)。※1 社員(雇用)区分制度……人材を効率的に確保、育成、活用、処遇できるように、社員をグループに分け異なる人事管理を適用する制度。例えば、管理職と一般職、事務職と技能職といった区分のほか、非正社員におけるパートタイマー、アルバイト、契約社員などの区分がある※2 社員格付け制度……社員の職務遂行能力や、実際に行っている業務、業務における役割など基準に、社員を格付けする制度。職能資格制度や職務等級制度、役割等級制度などがある

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