エルダー2019年8月号
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2019.816入するとともに、再雇用後の人事処遇制度も仕事基準とした点です。再雇用後の賃金は、現役時とは連動しておらず、再雇用時に担当する仕事の価値に応じて算定します。大木 ありがとうございました。高齢者の労働意欲の問題についておうかがいする前に確認しておきたいのですが、2013(平成25)年の高年齢者雇用安定法の改正により、希望者全員を65歳まで継続雇用することになり、だれもが働けるようになったわけですが、この法改正は、会社にとってどんな意味があったのでしょうか。大嶋 影響は大きかったと思います。60歳が節目という意識があまりなくなり、「無理してがんばらなくても定年後も会社にいられる」という感覚の人が増えた気がします。 当社では、2006年の法改正の影響もありました。それまでは定性的な再雇用の条件のもと、自然の流れで継続雇用していたのが、法律に合わせて条件を設けたことで、人事考課や出勤率など定量的な側面も含めて継続雇用について検討するようになりました。さらに、2013年の法改正により、働いている人の雰囲気が変わったように感じます。以前から、60歳以降も働き続ける風土はありましたが、継続雇用をしている人たちは自分の持ち味や得意な部分が周囲に見える形になっており、それを十分に発揮して活躍していました。法改正の後、「そんなにがんばらなくても、希望すればそのままいられるのでしょう」というように、それまでとは違ったニュアンスで「いられる感」を持った社員が出てきたように感じています。大木 前川製作所はかなり昔から高齢者雇用に取り組んでいますが、それでも、法改正によって働く人の意欲や行動が変化したのですか。大嶋 はい。2007年に会社を一社化した影響もあると思います。それ以前は10〜20人単位で独立法人制を採っていたので、小さいチームのなかで、自分や周りの人のやっていることが見えていたのですが、一つの会社になったことで、自分の貢献度合いをダイレクトに感じにくくなりました。小西 当社も、やはり法改正の影響を受けました。当初は、会社側の「雇わなきゃいけない」というプレッシャーが大きかったですね。いまは、大嶋さんと同じように、本人たちの意識の面に課題を感じています。60歳以降も働き続けられるのがあたり前だと思っている人が多くいます。これは当社にかぎったことではなく、私の周囲でも、「優秀な方なので、転職先も含めて自分で探せるだろう」と思うような人が、「会社は俺に何してくれるんだろう」と受け身の姿勢でいたりします。大木 それは、企業がこれまで、会社主導でローテーションやキャリア形成を行ってきたことが影響しています。日本では、60歳までは、会社主導で配置や能力開発などを行う一方、働く側は、「会社のいうことを聞いていれば、ひどいことにはならない」と思ってきた。最近の若い人はキャリア教育を受けているので、自分のキャリアは自分で考えなければいけないという意識がありますが、それより上の世代、特に男性は、「会社のいうことを聞いていれば大丈夫」という意識が根強くあります。その結果、60歳になって会社があまりフォローしてくれなくなると、どうしてよいのかわからなくなる。小西 それなりのパフォーマンスを上げていた人が、60歳になって再雇用した途端に、「この仕事しかやりません」といい出すこともあります。 30代や40代は、昇進競争が行われるなか、モチベーションアップの研修や国内外の留学制度など、会社からさまざまな機会が与えられました。ところが50代となると、そうした機会もなくなり、自分の立ち位置もみえてくる。そこで、その年齢に合ったマインドに少しずつシフトしていくとか、まだまだがんばれるとか、いろいろな道を示せるとよいのですが、当社にかぎらず、多くの企業はそうなっていません。そして、鼎 談

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