エルダー2019年8月号
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特集エルダー17高齢社員のモチベーションの維持・向上のツボ再雇用をする際には、会社も明確なプランがないまま、それまでの仕事をなんとなく継続させて、給料だけが下がるのです。大嶋 当社でも、60歳を過ぎて、それまでの仕事を継続することにモチベーションが維持できなくなって、「辞めたい」といい出す傾向が出始めたように思います。61歳くらいで辞めていく人がぽつぽついるのですが、その背景のひとつに、「自分がその仕事を担当している意味が見出せない」という思いがあるのではないかと考えています。会社としては、経験、知識が豊富な継続雇用の方が担当してくれていると安心という思いがあるのですが、当人たちは「忙しい現役メンバーの手が回らない仕事を、ただひたすらこなすだけ」でやりがいを感じられなくなっているようです。労働意欲が低下する前の50代で〝気づき〞をうながす研修を実施大木 高齢者のマネジメントを考えるうえでは、①高齢者に活躍してもらうための会社の仕組み、②現場の管理職による高齢者の活用の工夫、③現場の管理職を支援する人事の仕組み―この3点を押さえる必要があります(図表)。まず、60代前半層を活用していくために、会社としてどのような仕組みを設けているのですか。小西 当社では、60代になってから何かをするというのではなく、その前の段階で気づきをうながすことに重きを置いています。 具体的には、55歳までに「キャリアデザインセミナー」という研修を実施します。そこでは、定年後の生活なども見据えたうえで、今後どうキャリアを築いていくかを考えてもらいます。再就職支援会社の協力を得て、自身の市場価値を理解してもらい、「もう少しここを伸ばしたほうがよいですよ」などと伝えるようにしています。 その後は、58歳ごろまでに「キャリアエントリーシート」を提出し、再雇用を希望する人には、定年の半年前を目途に再雇用後の仕事を提示します。大木 定年後にどのような仕事をしたいか希望を書くわけですね。小西 はい。「定年で辞める」、「現職を継続したい」、「社内で別の仕事をしたい」、「再就職支援サービスを希望する」のなかから選択する形です。大半が再雇用を希望しますので、人事が社内で職探しをします。多いのは、定年前の仕事を同じ部署でそのまま引き継ぐケースです。本人の適性や経験を活かすためという面もありますが、個人的には、「積極的にかかわったり相談する場がないので、なんとなくそのままの仕事に就けてしまっているのではないか」という問題意識があります。大木 いまの仕事を継続するのがむずかしい人、例えば管理職経験者はどうするのですか。小西 部長経験者などは、子会社などに転籍することが多いですね。課長クラスは、以前は役職定年制を設け、定年前に役職を解いてスタッ玉川大学経営学部国際経営学科教授。経営管理論、経営戦略論を研究。労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』2016年No.667(「継続雇用者の戦力化と人事部門による支援課題」)ほか、本誌2018年12月号特別企画「経験者から見た『役職定年制』の評価・課題とキャリア・シフト・チェンジ」などを執筆。大木 栄一(おおき・えいいち)図表 高齢社員をマネジメントするうえでの視点会社・人事管理職高齢者③①②

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