エルダー2019年8月号
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特集エルダー19高齢社員のモチベーションの維持・向上のツボからなくて困っているのが現状だと思います。50代に対しては、活用方針の明確化を含め、メッセージや情報量が若い人や中堅層に比べてかなり少ないですが、これを増やすとなるとそれだけコストがかかります。そのあたりのバランスをどうお考えですか。小西 本人が自分の立ち位置に気づいてきた50歳ごろのタイミングで、会社としての本音のアプローチがあるといいですね。年齢に合ったマインドにシフトしていくとか、まだがんばれるとか、いろいろな道を示せるとよいと思います。 55歳でキャリアセミナーを行うと、「研修を受けるのは10年ぶりだな」といった人も多く、本人たちは、それはそれでうれしいんです。研修の目的は、「自分で気づいて自分で行動してほしい」ということですが、初めから自分で何とかできる人はほとんどいません。多くは、「何とかしなきゃ」と思いながら何もしていないか、まだ「会社が何とかしてくれる」と思っている。ですから、こうした機会は必要です。当初は希望者のみ参加する形にしていましたが、全員参加方式に変更しています。 ただ、当社の場合、この研修を受けた後、定年直前まで、会社からの情報提供が足りていないと感じています。55歳で気づかせるだけでなく、その後、カウンセラーのような人が相談に乗り、そこでマインドをチェンジして納得感を醸成する仕組みがあるとよいと思っています。大嶋 当社は、先ほどもお伝えした通り、56歳、58歳、60歳のヒアリング&カウンセリングをいまは行っておりません。高齢者に対する期待や、今後の方向性を共有する場だったので、なくしたことで影響が出てくることを心配しています。年1回の面談で期待することや、方向性をリーダーがうまく伝えられればよいのですが、若い社員に対して期待を伝えるときと、高齢者に期待を伝えるときでは、伝え方が違ってきます。現場まかせでは、管理職の負担が大きいと思います。 高齢者とのコミュニケーションを増やすと、たしかにコストはかかりますが、「高齢者を手厚くケアする」というより、「区別しない」ととらえるべきではないでしょうか。それこそ、定年を65歳に延長し、70歳までちゃんと働いてもらうのであれば、年齢のラインは設けないほうがよいでしょう。給料が60歳で変わるということはあっても、会社から伝えるメッセージの内容や頻度は現役と同じにし、年齢特有の状況変化については、リーダーが知識を持って対応できるよう、支援していきたいと考えています。大木 働く意欲の問題は、会社がその人たちをどう処遇し、どう活用するかということとともに、働く側が状況が変わったことに気づき、うまく適応できているかということが大きい。高齢期になって働く意欲と給料が下がってきたときに、「それは会社だけの問題ではないですよ」と気づきをうながす必要があります。どのくらいで気づくのがよいかというのは、最終的には人それぞれかもしれませんが、会社からメッセージを発する頻度や量は、手間暇をかけてでも増やしたほうがよいですね。「役に立っている感」があればモチベーションは回復する大木 本人の気づきをうながすうえでは、キャリア研修やカウンセリングなどのほか、どうやって給料を決めていくかという処遇の仕方も、会社からのメッセージになります。決め方の問題と水準の問題がありますが、小西さんは、以前から、「仕事に応じて給料を払え」といっていますよね。いまは65歳までの継続雇用ですが、これが70歳までとなっても、やはり給料の決め方は仕事基準がよいですか。小西 はい。若年層を育成する際は一定の時期までは職能資格がよいと思いますが、そこから先は、仕事基準のほうが納得感があります。大木 多くの人が長く働くことになると、総額人件費の問題も含め、ある程度の年齢以降は、

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