エルダー2019年8月号
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2019.820役割や仕事に応じて処遇することで、雇用を維持していくことが大切でしょう。ただ、日本の場合、本当の意味での職務給・仕事給にはなっていない企業が多いので、むずかしいですよね。人手不足だから長く働いてほしい職種がある反面、ホワイトカラーのように会社が仕事を探さないといけない職種もある。ホワイトカラーだった人に「工場の現場でやってください」というわけにもいかない。しかも、ホワイトカラーは管理職に就いていた人もいて給料が高い。このアンバランスはなかなかむずかしいですね。小西 そうですね。仕事を切り出して付与することは可能ですが、余計な仕事をさせてもいけません。当社では、定年前のその人の給料とは完全に切り離して、再雇用後の給料は、再雇用後の職務の市場価値を反映したものとなります。 ただ、「同一価値労働同一賃金」という言葉が独り歩きしている気がしていて、その点が課題と感じています。定年前は高い給料をもらっていたのに、再雇用後は、契約社員やパートなどの外部労働市場の給料が反映されるので、多くの場合、賃金が下がります。「それが市場価値だから」とか、「世間に比べたら水準が高い」、「転勤もないし、現役のような評価は行わないので、いままでとは違います」などといっても、「仕事が変わらないのにどうして?」となり、なかなか納得感が得られません。どんな仕組みを入れても、給料が下がることへの拒否反応は強いです。大木 給料が下がるので最初はモチベーションが落ちると思いますが、その後は、何年か働いていくうちに改善していきますか。小西 全員とはいきませんが、よいパフォーマンスを出している人も多いですよ。重宝する人っているんですよ。実務に長たけた人とか、得意先を押さえているとか。現場から頼りにされ、自分がいないと回らないと感じると、給料が下がっても活き活きと働いています。大木 給料の仕組みだけでなく、どれだけ自分がいないと会社が困ると思ってもらえるかが大きいのですね。大嶋さんのところはどうですか。大嶋 給料は現役のときより下がりますが、定年延長をにらみながら少しずつ上げてきましたので、以前よりは不満が少なくなったと思っています。とはいえ、下がることは下がりますから、いったんはモチベーションもダウンします。 ただ、当社は、60歳以上はある意味現役世代以上に厳しく評価しています。以前は、再雇用後、年々給料が減っていく制度だったことがあり、「わかってはいるが、気持ちが落ちる」といわれたこともありました。いまは、よい評価を得れば昇給もします。60歳以上の社員にもちゃんと期待する内容を伝え、評価しています。 加えて、先ほどからお話に出ているように、自分の仕事が会社の役に立っている実感が大事です。当社には、純粋な「ホワイトカラー」の方はほとんどいなくて、その人たちがいないと会社が回らないような仕事をしていただいているので、自分の仕事が会社やお客さまの役に立っていることを実感するとモチベーションが上がってきます。大木 雇い続けるために、会社が仕事をつくらなくてはいけない人はいないのですか。大嶋 当社の場合は、高齢者が勝手に自分の仕事をつくるんです(笑)。お客さまにいわれたことや、社内で必要なことに、わりと自由にチャレンジできる文化があります。例えば、品質管理のリーダーだった高齢者は、技術者の育成が手薄であるという課題をふまえ、技術者育成の講習会を始めたり、工場のトレーニングセンターと連携して中途採用者や中堅層の育成をしています。現役がやりきれない仕事を自分で見つけ、自分で立ち位置をつくってくれるので助かっています。大木 本人が自分で仕事を探してきて、それを「やっていいよ」と認める風土があるのは、すばらしいですね。鼎 談

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