エルダー2019年8月号
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特集エルダー21高齢社員のモチベーションの維持・向上のツボ現場の管理職は、人事に対して弱みを見せたがらない大木 次に、管理職による高齢者への対応についてうかがいます。高齢者にもいろいろな人たちがいますので、管理職にとっても大変な部分だと思いますが、いかがですか。小西 管理職のマネジメント能力に頼っているところはありますね。「この仕事をまかせておけば安心」という人に対しては、まかせきりにしているケースもあれば、「再雇用になると給料も下がるし、あまり触れないでおこうか」と判断してしまう管理職もいます。 例えば、処遇に不満を持っている高齢者を抱えている部署では、マネジメントに苦労します。そのため「やっと定年を迎えてくれたのに……」と継続雇用に不安や不満を表す人もでてきて、そんなときは、「この人が活躍できるのはこの職場です。新たに人を雇って教育するよりも、会社のことにくわしいうえに、熟練した労働者をいままでより安価な給料で雇えるのですよ」と説得して受け入れてもらいます。 もちろん、高齢者本人にも、「いままで同様にがんばってください」とお伝えしマッチングを図っています。大木 そうした状況は、小西さんの会社にかぎったことではなく、日本社会の普通のパターンだと思います。大嶋 当社でも、年下のリーダーが年上メンバーとのコミュニケーションに悩むときがあるという相談はありますよ。再雇用予定者のリーダーにアンケートを取るときに、「この人は別の職場で活躍してもらったほうがよいのでは」と回答してくる人は、おそらくそういう課題意識を持っていると思われます。大木 大嶋さんのところでもですか。大嶋 リーダーによるんです。再雇用予定者について「この人はほかで活躍したほうがいい」と回答して、「後は人事が何とかしてくれるはず」と特別なアクションを起こさない場合は、解決が長引いたりします。例えば高齢者の意識や仕事ぶりに問題がある場合は、上の階層やほかの部門などに相談して、役員から本人に話してもらうなど、やりようはあると思うのですが、そういう行動を起こさない。リーダーと高齢者の関係が変わってきたと感じます。大木 なぜ、そうなってしまったのでしょうか。大嶋 リーダーのローテーションの仕方が変わってきたことがあるかもしれません。以前は、その部門でずっと育ってきた人がリーダーになるケースが多かったのですが、最近は、2〜3年おきに複数の部門を異動するリーダーが出てきました。そのため、その職場に長くいる高齢者とほかからやってきたリーダーとのコミュニケーションが十分に取れていないことがあります。「この人は、昔からこうだよ」とわかっていて、それなりにかかわってきていれば、対応の仕方も違ってくると思うのですが。大木 そうした現場の管理職に対して、人事としては、どんなサポートをして、どうつき合っていくのがよいのでしょうか。先ほど小西さんがおっしゃっていましたが、日本水産では、管理職が人事に相談できる形になっているのですね。小西 相談窓口は、多くの会社でも設置されていると思いますが、当初は私が制度設計をした1984年日本水産株式会社に入社。営業を経て、1993年人事部労政課に異動。以降、年功要素を排除した職務等級制度の設計をはじめとする、人事労務業務に従事。現在、子会社の日本クッカリー株式会社に出向中。本誌2011年11月号~2012年4月号にて連載「どうする? 2013年問題 継続雇用制度対応奮闘記」を執筆。2017年からNPO法人ReSDAにも参画。小西 敦美(こにし・あつみ)

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