エルダー2019年8月号
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特集エルダー23高齢社員のモチベーションの維持・向上のツボですが、この人たちは、役割給で処遇にメリハリがついています。役員や部長になる人もいれば、下の等級のままの人もいますので、処遇の面でいうと、これまで通り、仕事に見合った処遇をしていけば問題ないと考えています。 ただ、いろいろな人がいますので、動機づけは重要です。上の世代のように「会社が最後まで何とかしてくれるだろう」とは思っていないはずですが、前川製作所さんのように、高齢者の活用方針を明確にし、会社からのメッセージを発信していく必要があります。大木 日本の多くの会社は、全員のモチベーションが高いわけでもないし、人手不足の職種もあれば、仕事をつくらなければいけない人もいる。会社全体で高齢者の活用方針を出すのもむずかしいところですが、重要ですね。 また、さまざまな人がいますので、外部労働市場の状況を知ってもらうことも有効です。新卒で入社してずっと上がってくると、自分の会社しかわからなくなります。小西 日本水産では、再就職支援会社を利用したキャリアセミナーについて、見直しの声もありましたが、「社内外を問わずがんばってもらおう」という方針で継続しています。また、異業種の人と積極的に競い交流する「他流試合型」の研修なども推進しています。大木 前川製作所さんはいかがですか。大嶋 バブル世代は多いですね。40代後半はさらに多く、各年齢にいまの3倍くらいの人数がいます。当社の現在の賃金制度では、人件費が大きな課題になることが予想されます。 また、当社も、キャリアの研修は重要と考えています。50歳の研修で気づきをうながすだけでなく、中堅社員の研修の内容も見直し、いままで会社が「ああしなさい、こうしなさい」といっていたのを、今年から、「もっと自分のキャリアをちゃんと考えよう」という方向にしていく予定です。他流試合的な要素も入れ、社員の視野を広げる必要も感じています。小西 私の周りの60歳前後の優秀な人は自分で会社を立ち上げたり、副業をしたりしています。これは、そういう能力も経験も備えた人を会社がうまく使えていないということの裏返しでもあると思います。「処遇がこれだけ下がり認められないなら、社外で違うことをしてみよう」となるわけです。不満を持っている高齢者のなかには優秀な人も多いので、社員に外部労働市場を意識させるとともに、例えば「週3日来てくれれば、あとは好きなことをしていい」といった形で再雇用契約を結ぶなど、会社としても活用の仕方を工夫すべきではないでしょうか。大木 優秀な人を活用するというのも、これまたむずかしい話です。組織では、優秀だから活用するというより、必要な人を活用するという面もありますから。その優秀さがいまの会社にとって必要な優秀さかという問題があります。 ただ、会社に不満があるからといって、高齢者がすぐに転職するのもむずかしいので、副業や異業種交流会など、自分の能力を社外で試せる機会を設けるのはよいですね。外を経験することで、自分の強みや弱み、どこの場だと役立つのかを知ることができます。そこで「もうちょっとこういうところをつけ足すとよい」と気づけば、50代の能力開発も進むかもしれない。50代になるとなかなか自分で能力開発をしないのは、何をすれば自分にとってプラスになるかわからないからという面もあります。 お二人のお話をうかがって、多くの発見がありました。「人事制度のみではなく、現場の管理職の対応と人事による支援が重要」、「定年前からキャリア研修などによって気づきをうながす」、「仕事、成果、給料のバランスが大事であり、それに本人が納得しないときは、現場のマネジャーと人事が協力して対応する」といった点は、多くの企業の参考になると思います。本日はありがとうございました。大嶋・小西 ありがとうございました。

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