エルダー2019年8月号
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特集エルダー25高齢社員のモチベーションの維持・向上のツボ定条件のもとで雇用する再雇用制度を導入しており、2007年には、希望者全員を年金受給開始年齢まで再雇用する「シニアパートナー制度」がスタート。再雇用社員の報酬に専門性と成果を反映させる仕組みを構築した。そのねらいは、成果に基づく評価と処遇を徹底し、再雇用者に求める役割への意識を高めるとともに、やりがい、働きがいを促進すること。2013年には、希望者全員を65歳まで再雇用する内容に改定し、翌年からは60歳の定年以降も、生きがいをもって働くことができるように、前述した「57歳研修」と「59歳時面談」をスタートさせている。当初、この「シニアパートナー制度」では、再雇用者に対して期待する役割は、主に「次世代への技能継承」としていた。しかし、少子高齢化や人手不足の影響により、2028年をピークに従業員の減少が予測されており、全従業員に占める再雇用社員は年々増加傾向にある。これらを背景に、「グループの持続的成長のためには60歳以上の年代層が大きな戦力となる」ととらえて、再雇用制度の改革に取り組み、2015年10月に、60歳以降も戦力としての活躍を期待する、現在の「シニアエキスパート制度」が誕生した。シニアエキスパート制度の月例賃金とインセンティブ報酬シニアエキスパート制度における再雇用の要件は、本人が希望し、業務遂行可能な健康状態であること、定年退職後すみやかに業務に従事できること、としている再雇用であっても、正社員と同様の活躍をしてもらうことを期待して、求める役割は従来の「次世代への技能継承」から、「これまでつちかってきた業務遂行能力および業務上での技術やノウハウを、立場・業務・職場に合わせて柔軟に発揮し、組織目標の達成に貢献する」、「豊富な経験を活かし、組織に新たな価値を創造する」の2点に明確化した。勤務形態は、7・5時間・週5日の「フルタイム」と、短日数・短時間の「サムタイム」(6パターン)を設けているが、再雇用前と同様に活躍してもらいたいとして、フルタイム勤務を原則としている。雇用期間は、定年退職日の翌日から原則1年間を単位とし、満65歳に達する日の属する期末(3月、9月)までとなる。賃金は、それまでの再雇用制度では過去の実績をほとんど考慮せずに設定していたが、現制度では、定年時点での社内資格・認定資格に応じて二つの区分を設定している。「区分Ⅰ」は、定年時点で専任担当職(上級・中級)であった場合に該当する者で、フルタイム勤務は月例賃金25万円、サムタイム勤務は1時間あたり1667円。「区分Ⅱ」は、定年時点で基幹職もしくは上級専門職であった者の場合で、フルタイム勤務は月例賃金29万円、サムタイム勤務は1時間あたり1934円(図表1)。ただし、区分Ⅱであっても、年度年齢57歳以降3年間の総合評価を考慮して、評価が著しく低い場合は25万円を下限として、通常設定する賃金を下回ることがある。諸手当に関しては、以前の再雇用制度では原則として通勤手当のみを支給していたが、シニアエキスパート制度では、基本的には正社員と変わらない内容としている。また、以前の再雇用制度では、一定の条件に該当するフルタイム勤務者のみを対象とし図表1 シニアエキスパート制度の月例賃金定年時点での資格フルタイム勤務サムタイム勤務区分Ⅰ:専任担当職(上級・中級)250,000円/月1,667円/時間区分Ⅱ:基幹職・上級専門職290,000円/月1,934円/時間

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