エルダー2019年8月号
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2019.826て、定額の賞与(年間40万円)を支給していたが、現制度ではこれを廃止。新たに「半期評定を反映したインセンティブ報酬」を「第二の退職金」として積み立てる仕組みを導入した。具体的には、SとA~Dの5段階の評定にあわせて、諸手当を含まない計算式による金額(契約賃金の0・5カ月~3・5カ月までを掛けた金額)を積み立てるというもの。評価Dの場合は「支給なし」となる(図表2)。「第二の退職金」は、所得税として課税される金額を考慮し、支給は再雇用終了時点に行うことを原則としている。雇用契約時に(更新含む)「退職金前払い」を選択することができるが、この場合、①在職老齢年金への影響があること、②給与所得となり、退職所得控除の適用とはならないこと、③それ以降に退職金に変更することはできないこと、の3点を本人に説明している。しっかり働き、評価されることが働きがいにつながるシニアエキスパート制度の大きな特徴は、再雇用であっても、定年退職前と同様の活躍をしてもらうことを期待して、求める役割を明確化し、成果に基づく評価と処遇を行っていることである。そのため、現役の従業員と同様に、基準にのっとって半期ごとに評価する「絶対評価」を実施している。評価項目は、具体的な形となってあらわれた成果を、結果とプロセスから評価する「業績評価」、保有する業務遂行能力の発揮について評価する「能力評価」で構成。また、主担当の業務以外で特記すべき組織・チームへの貢献があれば「組織貢献」として加点対象となる。同社人事部厚生・健康支援グループの石川英樹グループ長は、シニアエキスパート制度について、「しっかり働くことが働きがいにつながる、という『覚悟』と『働きがい』を重視した制度で、戦力として活躍してもらうという意味でも、現役社員と同じ尺度で評価を行う制度としました。制度の内容と求められる役割を定年退職前の研修で説明し、59歳時の面談とあわせて、60歳以降の働き方を事前にイメージできるよう、60歳の定年を迎える前からの取組みにも注力する」という。再雇用者の近況については、「制度に対してはおおむね好評で、個人差はあるでしょうが、ほとんどの人がやりがいを持って働いているとみています」と語った。シニアエキスパート制度は積水化学工業単体で適用している制度のため、今後の課題は、グループ企業への展開を進めること。ただし、同社では現在、定年延長の検討も進めており、このことも含めて今後の展開について考えていきたいとしている。再雇用者は、定年直前まで行っていた業務を同じ部署で継続していることがほとんどのため、かつての部下が上司となることも多く、年下上司のマネジメント力の強化をテーマとした研修の充実にも注力しているそうだ。人事部厚生・健康支援グループ長の石川英樹氏図表2 第二の退職金の評価半期評定計算式S契約賃金×3.5カ月A契約賃金×2.0カ月B契約賃金×1.2カ月C契約賃金×0.5カ月Dなし

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