エルダー2019年8月号
39/68

高齢者に聞くエルダー37を過ぎてからでも働かせてもらえる職場があることを知り感動しました。最初は、カローレが運営するコミュニティレストラン「ここほっと」で働くことになりました。そのうちにカローレが運営する学童保育でおやつを配ったり、片づけを手伝ったりするようになりました。思いがけず子どもたちに接する機会ができてとても嬉しかったです。実は、面接のときには保育士の資格があることを話しませんでした。その後、履歴書を提出したときに、資格があるなら保育士として働きませんかと声をかけてもらいました。ちょうど0歳から2歳児までを一時預かりしていた「ベビーかろーれ」が認可保育園になる時期と重なり、人手が必要になったので、私にも保育士として働ける道が開かれました。NPO法人カローレは学童保育から出発し、現在では小規模保育やコミュニティレストランなど総合的な福祉サービスを展開している。地域に貢献する多彩な活動は、平成30年度の高年齢者雇用開発コンテスト※1で優秀賞を受賞し、その取組みは本誌でも紹介した※2。待ちに待った保育士デビュー65歳になってから、保育士の資格を活かせるとは夢にも思っていませんでした。嬉しさ半分、保育の経験がない新人がちゃんと任務を果たせるだろうかという不安が半分で、着任する前夜は、なかなか眠れなかったことを覚えています。夢中で歩き続けて3年、現在は2人体制の早番と遅番を担当しています。早番は7時半から子どもたちがお昼寝する12時半まで。歩いて10分ほどの自宅で休憩してから、16時に保育園に戻り、18時半までが遅番の勤務となります。カローレで働いているスタッフは、事業所内保育所にお子さんを預けていますので、私のように自由に時間を使える人間が、早番や遅番を引き受けることで、少しはお役に立てているかもしれません。かつて私も自分が働くために、義母に一緒に住んでもらって力を借りたことを思い出します。仕事と育児が可能な環境はずいぶん進歩しましたが、それでも課題は多いようです。現代のお母さんたちは日々のストレスでへとへとになっていますから、おばあちゃん世代の私が「いってらっしゃい」、「おかえりなさい」と声をかけることでほっとされる方もいると聞いて、本当に嬉しかったです。すべてのお母さんたちが安心して働けるように、高齢者がしっかりお手伝いしていこうと気を引き締めています。「カローレ」はイタリア語で「ぬくもり」を意味しますが、子どもたちはもちろん、働く高齢者にも「ぬくもり」のある職場です。現在の最高齢の方は、学童保育の仕事にたずさわる79歳の方だそうです。子どもたちとともに生涯現役の道をカローレでは、ライフスタイルに合わせて勤務形態が選択できます。勤務時間は日々同じですが、趣味のフォークダンスの練習がある木曜日の遅番と金曜日は休ませてもらっています。フォークダンス歴は20年ぐらいになりますが、楽しいだけではなく、しっかり体を動かすので健康にもよいようです。もっとも気をつけているのは、かぜをひかないようにすること。子どもたちにうつさないことはもちろん、保育の仕事に穴をあけてはいけませんから、自己流の体操で身体を鍛えています。毎日緊張感を保つことと、自分が必要にされていると感じることこそ、モチベーションアップにつながると私は思います。民家を改築した「ベビーかろーれ」は、子どもたちにとって親戚の家にいるようで、安心感があるようです。やさしい親戚のおばあちゃんとして、子どもたちの笑顔に寄り添い続けたいと思っています。広い園庭からは電車がとても大きく見えるので、電車が通れば泣いていた子どももピタリと泣きやみます。一日をケガなく元気に過ごした子どもたちは、ママたちがお迎えにくるととびきりの笑顔を見せてくれます。この笑顔を力に、体力と気力の続くかぎり、生涯現役の道をしっかり歩いていこうと思っています。※1 高年齢者雇用開発コンテスト…… 企業が行った、高齢者がいきいき働くことのできる職場づくりの事例を募集・収集し、優秀事例について表彰を行っている。厚生労働省と当機構が主催※2 エルダー 2018年11月号検索

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る