エルダー2019年8月号
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2019.842震災後の社員の生活を守るため定年を65歳に延長人手不足や社員の高齢化が進行するなかで、いかに生産性を向上させるかが大きな課題となっている。その一つの方法が、新技術導入による省力化や業務の効率化の推進である。だが、新技術や機械の導入による省力化は従業員が長年つちかってきた知識・経験やスキルを活かすことがむずかしくなるだけではなく、新たなスキルも習得しなければならない。ソフトランディングするには高齢社員の新技術に対する理解と意欲の喚かん起きがきわめて重要になる。建設業界でいち早く新技術を導入し、生産性向上に果敢に挑戦しているのが宮城県石巻を失った若い社員がたくさんおり、家を建て直す必要がありました。住宅ローンを組むなど生活再建のためには収入確保が必要なため、継続雇用で70歳ぐらいまで働くことができればローンの支払いが終わります。こうしたさまざまな事情をふまえて、定年を65歳に引き上げました」定年を65歳に延長しても給与は毎年昇給する。一方、66歳以降は本人の希望により上限年齢を設けない継続雇用とし、原則として昇給はしないが65歳時の給与を保証している。退職金は定年時に支給するのではなく、定年後も継続して積立てを行い、退職時に支給する。手厚い処遇の背景には、「体力の続くかぎりは現役としてがんばってほしい」(大槻社長)という期待がある。市にある大正建設株式会社だ。同社は建築・土木などの総合建設業と一般貨物運送事業を営む社員40人の会社。うち60歳以上が14人と35%を占め、65歳以上の社員も8人いる。同社は2013(平成25)年1月に定年年齢を65歳に引き上げ、66歳以上の社員は継続雇用とする制度を導入した。大おお槻つき正まさ治じ社長はその理由についてこう語る。「一つめは、少子高齢化のもとでの人材確保です。特に石巻市は毎年人口が流出しており、東日本大震災による津波浸水地域として、被害者の数も多く、にない手不足が深刻です。二つめは、団塊の世代が定年時期に入り、中堅・若手社員への技術の継承が思うように進まないという事情があります。三つめは、被災により家 生涯現役時代を迎え、就業期間の長期化が進むなか、60歳以降も意欲的に働いていくためには、高齢者自身のスキルアップ・能力開発が重要になるといわれています。つまり、生涯現役時代は「生涯能力開発時代」といえます。本企画では、高齢者のスキルアップ・能力開発の支援に取り組む企業の施策を、人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説します。高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―高齢社員の高齢社員の―生涯能力開発時代へ向けて高齢社員の―人事ジャーナリスト 溝みぞ上うえ憲のり文ふみ第4回大たい正しょう建設株式会社(宮城県石いしのまき巻市)

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