エルダー2019年8月号
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エルダー43生産性向上と職場環境改善を目ざし最新のICT建機の導入を決断社員の仕事はパワーショベルやブルドーザーなどの建設機械のオペレーター、ダンプトラックの運転などに分かれるが、実際は、一人ひとりに、建築・土木作業などあらゆる仕事をこなせる多能工的役割が期待されている。それだけに高齢者の負荷も少なくない。現役として長く活躍してもらうには、職場環境の改善が必要との認識から、これまでさまざまな取組みを実施してきた。その柱が「安全衛生会議の活性化」、「新技術の導入」、「休日の確保」の三つである。建設従事者の安全性の確保は不可欠の条件だ。労働安全衛生法に基づく安全衛生責任者や職長の講習は1回受講すれば終わりではなく、定期的な受講が義務づけられており、高齢者も受講する。同社では安全衛生会議が定期的に開催されているが、安全意識を徹底するための会議の活性化策も工夫している。例えば、会議では必ず司会と書記を設けるが、高齢社員と中堅・若手社員の二人一組で担当し、年齢に関係なく意見をいい合える雰囲気づくりに努めている。2番目の新技術の導入とは、最新の「ICT(情報通信技術)機器」※を搭載した建設機械のことだ。建設業界では「情報化施工」と呼ぶ。通常の建設作業は、現場の調査・設計・測量の後、施工を経て検査が行われる。情報化施工は簡単にいえば、設計や測量データなどバラバラになっている情報を同じ規格でまとめて現場施工に利用するものだ。具体的にはどのように施工するかという調査・設計データを機械にインプットすれば半自動的に施工が可能になる。同社には全部で40台の建設機械があるが、うち20台がICT建機だ。駐車場には十数台の建機が並んでおり、実際にパワーショベルの運転席に座らせてもらった。外観や内部はまったく普通の建機と同じである。座席の前にレバーがあり、通常はこのレバーを手で操作し、先端部分の土砂をすくい上げるバケットを動かして掘くっ削さく、整地、地固めなどの作業を行う。だがこの機械には左側にモニターが二つついている。一つは入力したデータを表示するもの、もう一つは機械の周囲360度を映し出す。機械の操作は半自動だが、実際は人がレバーを動かす。大槻昌まさ克かつ副社長は機械の機能について次のように説明する。「モニターからデータを出し入れして調整します。人の操作は必要ですが、例えば間違って深く掘ろうとしたら、設定したデータの数値以上に掘らないように制御され、設計図通りの高さで掘ることができます。バケットの傾きや位置を設計図面に合わせてくれるので効率よく作業ができます。通常の機械操作はレバーを縦横に動かしながら機械を旋回したり掘削したりするなど操作が複雑なので、ベテランになるには5〜10年の経験が必要です。しかしICT建機は間違った動きを制御し、機械に従って動かす※ ICT(情報通信技術)機器…… ネットワーク通信による情報・知識の共有が可能な機器大槻昌克副社長大槻正治社長高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―

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