エルダー2019年8月号
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2019.852はじめに現在、いわゆる非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)は、雇用者全体の約4割を占めており、その待遇は、正規雇用労働者の待遇と比較して大きな差があるといわれている。そのようななかで、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにすることが重要となっている。2018(平成30)年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」により、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を実現するため、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム労働法)※、「労働契約法」および「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)について改正が行われ、2020年4月1日(中小企業へのパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年4月1日)から施行される。本稿では、パートタイム労働法、労働契約法の主な改正内容や個々の待遇について、どのような待遇差が不合理と認められるか等の原則となる考え方と具体例を示した指針(ガイドライン)等について解説する。なお、労働者派遣法の改正については、次回解説する。同一企業内における不合理な待遇差を解消するための規定の整備1現行では、正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の待遇差について、①業務の内容・業務にともなう責任の程度(職務内容)、②職務内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)、③その他の事情、の3要素を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとする、いわゆる均衡待遇規定がある(パートタイム労働法第8条・労働契約法第20条)。しかし、現行の規定においては、正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間における個々の待遇の違いと、3要素との関係性が必ずしも明確ではなく、どのような待遇差が不合理と認められるかについて解釈の幅が大きいものとなっている。今回の改正で、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して行われるべき旨を明確化した(パートタイム・有期雇用労働法第8条)。また、現行ではパートタイム労働者についてのみ設けられている、職務内容と人材活用の仕組みが正規雇用労働者と同一である場合に差別的取扱いを禁止する、いわゆる「均等待遇規定」について、有期雇用労働者も対象に追加した(パートタイム・有期雇用労働法第9条)。同一労働同一賃金の実現に向けて―正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止―《前編》厚生労働省 雇用環境・均等局 有期・短時間労働課別企画特※  今回の改正で、パートタイム労働法の各規定の対象に有期雇用労働者を加え、法律の題名も「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)に改めた 2020年4月1日より、同一企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇差の解消を目的に、「同一労働同一賃金」について定めた、パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法が施行される。そこで本企画では、前後編の2回に分けて、同一労働同一賃金に関する法改正の要点について解説する。

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