エルダー2019年8月号
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特別企画エルダー53同一労働同一賃金の実現に向けて 《前編》なお、異なる企業・団体間での正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の待遇差については、対象としていない。■ガイドラインの策定パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法に基づき、2018年12月に「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(ガイドライン)が策定された。ガイドラインは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差が不合理なものでないのかなどの原則となる考え方と具体例について、基本給、賞与、手当などの個々の待遇ごとに示したものである(図表)。正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、そもそも待遇の決定基準・ルールが異なる場合(例:正規雇用労働者には経験や能力に応じた基本給を支給する一方、非正規雇用労働者には職務に応じた基本給を支給)には、その違いは、単に「将来の役割期待が異なるため」といった主観的・抽象的な説明では足りず、前述の①職務内容、②人材活用の仕組み、③その他の事情、の3要素のうち、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められるものの客観的・具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならないこととしている。また、以下の内容を基本的な考え方として述べている。• ガイドラインに示されていない退職手当、住宅手当、家族手当等や、具体例に該当しない場合についても、不合理な待遇差の解消等が求められる• 各企業において、労使による個別具体の事情に応じた話合いが望まれる• 正規雇用労働者に複数の雇用管理区分(総合職、地域限定正社員等)がある場合、正規雇用労働者のすべての雇用管理区分と非正規雇用労働者との不合理な待遇差の解消が求められ、低い待遇の雇用管理区分を新設したとしても、不合理な待遇差の解消等は回避できない• 正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で職務内容等を分離したとしても、不合理な待遇差の解消が求められる• 基本的に労使で合意することなく正規雇用労図表  「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要基本給円役職手当円通勤手当円賞与円時間外手当円深夜出勤手当円休日出勤手当円家族手当円住宅手当円給与明細書 正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の賃金の決定基準・ルールに違いがあるときは、「将来の役割期待が異なるため」という主観的・抽象的説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない。 「①能力又は経験に応じて」、「②業績又は成果に応じて」、「③勤続年数に応じて」支給する場合は、①、②、③に応じた部分について、同一であれば同一の支給を求め、一定の違いがあった場合には、その相違に応じた支給を求めている。基本給 役職の内容に対して支給するものについては、正社員と同一の役職に就くパートタイム労働者・有期雇用労働者には、同一の支給をしなければならない。また、役職の内容に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。※同様の手当…特殊作業手当(同一の危険度又は作業環境の場合)       特殊勤務手当(同一の勤務形態の場合)       精皆勤手当(同一の業務内容の場合) 等役職手当等 パートタイム労働者・有期雇用労働者には正社員と同一の支給をしなければならない。※同様の手当…単身赴任手当(同一の支給要件を満たす場合)等通勤手当等 正社員と同一の時間外、休日、深夜労働を行ったパートタイム労働者・有期雇用労働者には、同一の割増率等で支給をしなければならない。時間外手当等 会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、正社員と同一の貢献であるパートタイム労働者・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、貢献に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。賞与 家族手当、住宅手当等はガイドラインには示されていないが、均衡・均等待遇の対象となっており、各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれる。家族手当・住宅手当等※待遇差が不合理か否かは、最終的に司法において判断されることにご留意ください。

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