エルダー2019年8月号
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2019.854働者の待遇を引き下げることは、望ましい対応とはいえないさらに、定年後に継続雇用されたパートタイム労働者・有期雇用労働者についても、パートタイム・有期雇用労働法の対象となる。ガイドラインでは、2018年6月に出された長澤運輸事件最高裁判決をふまえ、以下のとおりとしている。• 有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、正規雇用労働者と有期雇用労働者との間の待遇差が不合理であると認められるか否かを判断するに当たり、①職務内容、②人材活用の仕組み、③その他の事情、の3要素のうちの「③その他の事情」として考慮される事情に当たりうる• 定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、さまざまな事情が総合的に考慮されて、正規雇用労働者との間の待遇差が不合理と認められるか否かが判断される。そのため、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに正規雇用労働者との間の待遇差が不合理ではないとされるものではない労働者に対する待遇に関する説明義務の強化2パートタイム労働者・有期雇用労働者の、自らの待遇についての納得性を向上させるとともに、事業主しか知り得ない情報があるために労使の話し合いに支障が生じたり、労働者が訴えを起こすことができなかったりすることがないようにするため、正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化した。具体的には、パートタイム労働者・有期雇用労働者から求めがあった場合に説明しなければならない事項として、正規雇用労働者との間の待遇差の内容・理由等を追加した(パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項)。さらに、事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者が説明を求めたことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないこととした(同条第3項)。説明の詳細については、「事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等に関する指針(パートタイム・有期雇用労働指針)」において、以下のとおりとしている。(1)比較の対象となる通常の労働者について待遇差に関する説明において、比較の対象となる通常の労働者は、職務内容、人材活用の仕組み等が、パートタイム労働者・有期雇用労働者の職務内容、人材活用の仕組み等に最も近いと事業主が判断する通常の労働者とすること。(2)待遇差の内容について事業主は、待遇差の内容として、(ⅰ)通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の待遇に関する基準の相違の有無、(ⅱ)通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇の個別具体的な内容または待遇に関する基準を説明すること。(3)待遇差の理由事業主は、通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者の①職務内容、②人材活用の仕組み、③その他の事情のうち、待遇の性質や待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき、待遇差の理由を説明すること。(4)説明の方法説明にあたっては資料を活用し、口頭により説明することを基本とすること。ただし、説明すべき事項をすべて記載した、パートタイム労働者・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、その資料を交付する等の方法でも差し支えないこと。このほか、現行法では、事業主はパートタイム労働者を雇い入れたときには、昇給・賞与・退職手当の有無、苦情の処理に関する窓口について文書等により明示しなければならないこととしている(パートタイム労働法第6条)。また、事業主はパートタイム労働者を雇い入れたときには雇用管理の改善措置の内容を、その雇用するパートタイム労働者から求めがあったときには、待遇の決定に当たって考慮した事項を説明しなければならないこととしている(パートタイム労働法第14条)。今回の改正では、これらの規定の対象に有期雇用労働者が追加された。

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