エルダー2019年8月号
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特別企画エルダー55同一労働同一賃金の実現に向けて 《前編》行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備3パートタイム・有期雇用労働法の均等待遇規定・均衡待遇規定は民事的効力を有するものと解されているが、パートタイム労働者・有期雇用労働者にとって訴訟を提起することは重い負担となる。このため、パートタイム労働者・有期雇用労働者がより救済を求めやすくなるよう、行政による事業主への助言・指導といった履行確保措置や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定を、パートタイム労働者・有期雇用労働者について統一的に整備した(パートタイム・有期雇用労働法第18条、23条〜27条等)。パートタイム・有期雇用労働法の円滑な施行に向けた取組み4企業・団体がパートタイム・有期雇用労働法に円滑に対応することができるよう、厚生労働省では以下のような取組みを行っている。(1) 各種マニュアル等の策定・厚生労働省ホームページでの公開ア 取組手順書   自社の状況が法律の内容に沿ったものなのかどうか、社内制度の点検の手順を示している。(https://www.mhlw.go.jp/content/000468444.pdf)イ 業界別マニュアル   具体例を付しながら、各種手当、福利厚生、教育訓練、賞与、基本給について、点検・検討の手順を詳細に解説したもの。   スーパーマーケット業、食品製造業、印刷業、自動車部品製造業、生活衛生業、福祉業、労働者派遣業については、業界版のマニュアルも作成している。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03984.html)ウ  職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル   基本給に関する均等・均衡待遇の状況を確認し、等級制度や賃金制度を設計する1つの手法として、職務評価について解説している。   セミナーやコンサルティングにより、職務分析・職務評価の普及や導入支援も実施している。(https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/estimation/)(2) 働き方改革推進支援センターにおける相談援助働き方改革全般に関する相談・支援のためのワンストップサービス拠点として、民間団体等に委託し、47都道府県に設置している。雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた非正規雇用労働者の待遇改善に関することだけでなく、時間外労働の上限規制への対応に向けた弾力的な労働時間制度の構築や、生産性向上による賃金の引上げ、さらには、雇用管理改善による人手不足への対応や、助成金の活用など、労務管理に関する課題について、社会保険労務士等の専門家が無料で相談・支援する体制を構築している。電話・メール・来所による相談やセミナーの開催だけでなく、働き方改革推進支援センターの専門家が企業・団体を訪問し、就業規則の見直し、労働時間短縮、賃金引上げに向けた生産性向上などに関するコンサルティングを通じて、個々の事業主の状況に応じた改善計画案の提案も行っている。(3)キャリアアップ助成金による支援パートタイム・有期雇用労働者の賃金規程等の増額改定や、正規雇用労働者との賃金規程・諸手当制度の共通化等を行う事業主に対して、キャリアアップ助成金を支給している。厚生労働省のホームページや「パート・有期労働ポータルサイト」でも、パートタイム・有期雇用労働法の解説動画など、参考となる資料を更新・掲載しているので、参考にしていただくとともに、具体的にどのように取り組んでいったらよいかお悩みの点があれば、働き方改革推進支援センターまたは都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談いただきたい。◆ 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html◆ 「パート・有期労働ポータルサイト」 https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/

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