エルダー2019年8月号
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2019.84レンゴー株式会社 人事部長玉置克己さん対策などに積極的に取り組んでいますね。玉置 働き方改革については、政府が働き方改革を主導する以前の2014年11月に、当社の会長兼社長の大おお坪つぼが理事長を務める、全国段ボール工業組合連合会が、産業別労働組合と共同で「生産性向上委員会(TFPコミッティー)」を設置し、業界全体で取り組んでいます。段ボール業界は受注産業ですし、長時間労働があたり前の世界でした。しかも、段ボールという製品は、当社がつくったものでも、中小企業がつくったものであっても、それほど大きな違いはありません。そのため、1社だけで長時間労働対策を実施しても、ユーザーは別の会社に発注するだけなので、業界の長時間労働体質は変わらないのです。 そこで、常態化している長時間労働を是正することで人手不足への対処のみならず、若者が夢を持って働き続けられる産業にしようという問題意識を共有し、業界をあげて取り組むことを2014年に宣言しました。その後、世の中の働き方改革も追い風となり、段ボール業界の意識も徐々に変わりつつあります。―貴社も2017年に月平均の時間外労働が60時間以上の社員をゼロにするなど、成果を上げています。また今年1月には「レンゴーはつらつ健康宣言」を出すなど健康経営※2にも取り組んでいます。玉置 もともとは長時間労働があたり前の会社でしたが、10年以上前から管理職や社員の意識を変えるために、あらゆる施策を実施してきました。有給休暇取得率も低かったのですが、生産性向上委員会などの取組みによって、2018年の平均取得日数は11・6日、取得率60%を達成しました。定年が65歳になったことで、長時間労働対策はより重要な課題と認識していますし、60歳以降の人だけではなく、女性や契約社員も含めて同じように、この問題を解決していきましょうと発信し続けています。 「レンゴーはつらつ健康宣言」も、65歳定年に対する社員・組合員の不安を解消するための処方箋と位置づけています。健康増進に向けた取組みなどの重点施策を打ち出し、65歳まで健康で元気に働けるよう、積極的に取り組んでいくつもりです。―定年延長を検討している企業に、アドバイスをいただけますか。玉置 当社の65歳定年制度は、最初からいまの仕組みを目ざしていたわけではなく、何度も議論・検討した結果、最終的に現在の形になりました。組合員からも「コストアップになるので大丈夫か」という声があがりましたが、今後の日本の状況を考えると、どこかでやらないといけない決断だったと考えています。いまでは導入するまでの迷いや不安は消え、ある意味すっきりしたというのが正直な気持ちです。 導入した以上、今後は60歳以降の人たちの力をいかに引き出し、活躍をうながしていくかが大きな課題です。定年延長も企業によっていろいろなやり方がありますが、早く導入したほうが次の課題に速やかに取り組めるのではないでしょうか。(聞き手・文/溝上憲文 撮影/安田美紀)「レンゴーはつらつ健康宣言」を策定し長時間労働削減や有給休暇取得を推進※2 「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です

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