エルダー2019年8月号
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エルダー63接着剤で綴じるものもあります。すべての機械を全社員が使いこなせるよう社内で試験も行い、合格した社員にはわずかな額ですが給料にも反映しています」技と志を受け継ぐ者がいるだからさらにチャレンジする若い職人さんが、スッ、スッとリズムよく、正確に流れるような手さばきで表紙を織布でくるむ。その動き自体が、粋だった。製本の技で知られる同社で働きたいという若い人や女性も増えた。現在の社長は、長男の剛ごうさんだ。「息子には、私ができない仕事を持ってこいといいます。その仕事のやり方を考えるのが、私の役目です」家業だからこそ妥協はしない。今日も渡邊さんの声が現場に響く。株式会社 博勝堂TEL:03(3269)5248(代表)FAX:03(3269)4578http://www.hakushowdou.com/(撮影・福田栄夫/取材・朝倉まつり)から、融合させて特殊な製本の仕事ができるのです。だからうちは、特殊製本 博勝堂なのです」61ページに紺色の表紙の和装本がある。常ときわ磐津ず※2の譜面本だ。外見からはわからないが、静かな環境で紙をめくっても音を立てないよう、やわらかい和紙を使い、開きやすく工夫されている。デザイナーの要望に応えるために、特殊な加工が必要ならば、作業の工程すらも組み替える。「できないことはないとがんばっていたら、できることが増えていきました。博勝堂さんなら、前例がなくても何か答えを出してくれると期待されるようになりました」しかし、さまざまな依頼を受けるのは並大抵のことではない。多様な機械を用途に合わせて使い分ける必要がある。「例えば、本の背の側を固めていく﹃背がため﹄の工程ですと、上製本には三枚貼り機を使い、並製本には無線綴じ機を使います。※2 常磐津三味線に乗せて語られる「語り物」。浄瑠璃から生まれ、江戸歌舞伎とともに発展した織布や木など、デザイン性の高い自然素材の扱いにも長けている糊づけを見守る。ひと塗り、ふた塗り、目的や意識が細かく異なる刷毛づかい会長の渡邊さん(左)は、社長の剛さん(右)にいう。「私ができない仕事を持ってこい」糊のり、にかわ、水用など「はけ」のいろいろ。馬のたてがみ製は高価厚生労働大臣検定の国家資格「製本技能士」(一級2名、二級5名)伝統から継承した技術が、新たな技術を生む。職場のみなさん

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