エルダー2019年9月号
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特集地方・地域が発信する高齢者の働き方エルダー9が、高齢者の活躍の場の拡大を図っているわけですが、今後現役をリタイアした高齢者が増え続けていくなかで、新たな活躍の場を求める高齢者のニーズに対応しきれるかどうか定かではありません。そこで期待されるのが、現在進行形で進められている厚生労働省主導の「生涯現役促進地域連携事業」(以下、「連携事業」)です。大きな特徴は地方自治体が中心となって高齢者の活躍の場を拡げていくことです。ご存知の方も多いと思いますが改めてこの事業を紹介しますと、この事業は地方自治体(都道府県/市区町村)がまず所定の「地域高年齢者就業機会確保計画」を策定し、そのうえで地域の関係機関(自治体をはじめ高齢者の就業などに関係する機関)により「協議会」などを組織します。その組織が中心となって高齢者の活躍の場を拡げるためのさまざまな活動を行っていきます。連携事業は厚生労働省からの公募(継続的に実施される)に対して、各地方自治体が手をあげて採択された場合に実施できる事業です。この事業の意味合いをもう少し伝えるために図表2を作成しましたのでご覧ください。「高齢者の仕事の内容(性質)」と「それを開拓し斡旋する機関がカバーする範囲」を付ふ置ちしています(筆者のイメージ)。縦軸には「仕事の難易度(≒賃金の高さ)」、横軸には「企業ニーズが高い仕事と地域ニーズが高い仕事(営利・非営利的な仕事といい換えてもよいかもしれない)」を置いて、このなかに「民間の派遣・紹介企業」、「シルバー人材センター」、「ハローワーク」、そして「連携事業(協議会)」を付置しています。この図から申し上げたいことは、連携事業の活用により、高齢者が活躍できる仕事の範囲が拡大するということ、特に福祉や子育て、あるいは観光産業の強化、地場産業のにない手不足解消といった、地域として有する課題の解決(左側)に連携事業(協議会)が中心となって、高齢者の活躍の場を拡充させていく方向にあるということです。連携事業はあくまで「地域が抱える課題の解決に、高齢者の力を活かしていく」ことを志向している事業であり、高齢者の活躍の場の拡大という重要な社会的課題に対して、地域が一体となって取り組む〝仕組み〞といえます。2016年4月に連携事業が創設されてから3年が経過した現在(2019年8月)、全国では58の地域(道府県23、市町村35)で進められています(図表3)。取り組まれている地域を割合で表すと、都道府県では49%と約半数で取り組まれていますが、市区町村はわずか2%これまでこれから専門性が高い仕事(高い賃金)単純・軽易な仕事(低い賃金)未開拓(空洞化)民間派遣・紹介シルバー人材センターハローワーク専門性が高い仕事(高い賃金)単純・軽易な仕事(低い賃金)生涯現役促進地域連携事業(協議会)民間派遣・紹介シルバー人材センターハローワーク地域ニーズが高い仕事企業ニーズが高い仕事地域ニーズが高い仕事企業ニーズが高い仕事図表2 生涯現役促進地域連携事業のイメージ出典:筆者作成

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