エルダー2019年9月号
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2019.912ワンストップ総合相談窓口「そうじゃ60歳からの人生設計所」の新設総社市では2016年4月、高齢者の就労などに関する意識調査を実施した。対象となった60歳から69歳の市民を抽出(1200人)、約半数が「現在働いていない」と答えたが、そのうち「働きたい」と答えた人は3割を超えた。この「働きたい意欲」にどう応えていくかが大きな課題となった。そうしたなか、総社市では、企業誘致が積極的に進められており、大手自動車メーカーの協力会社工業団地をはじめ、食品メーカーや日本郵便株式会社なども進出している。働きたい意欲のある高齢者が存在し、労働力を必要とする市場がある。総社市が「連携事業」に手をあげたのは自然の流れであったといえるだろう。「意識調査から2カ月後の2016年6月に『促進協議会』が設立されました。構成員は社会福祉協議会(以下、「社協」)や老人クラブ、観光協会、商工会議所、シルバー人材センター、金融機関など10団体で、会長には市長が就任し、事務局は長寿介護課が担当することになりました。まず、2016年度の厚生労働省『連携事業』へ事業構想を提案し、採択されました」事業採択を受け、ハローワークやシルバー人材センター、社協などとの連携のもと、2016年10月に開設されたのが、ワンストップ総合相談窓口「そうじゃ60歳からの人生設計所」(以下、「人生設計所」)だ。社協の持つ障がい者雇用のノウハウを活用したもので、高齢者の就業や創業などのニーズを把握したうえで、ハローワークやシルバー人材センターなどの関係機関と連携し、マッチングを行う。さらに、もともと福祉政策に注力していた総社市では、地域を主役に、早期発見、早期対応、専門的支援、社会資源開発、社会教育、地域づくりの六つの機能を盛り込んだ「地域包括ケアシステム」を構築している。人生設計所もこの地域包括ケアシステムのなかに配置されており、就労支援よりも生活困窮支援が必要であれば、担当センターに紹介することができ、逆に生活困窮支援を希望する高齢者に就労の見込みがあれば、人生設計所へとつなげることもできるなど、同市の福祉政策の広範な窓口としても機能している。「初年度の相談は968件、132人が登録し、就労できた人はわずか20人でした。現在は相談件数が約6倍、登録者数も約3倍となり、200人を超える方が就労、創業しています。人生設計所は家族の介護や体調面の不安など、さまざまな事情を持つ高齢者の『地元で働きたい』というニーズに応えるため、3人の専従職員が地域の企業を回って、登録した高齢者とのマッチングを行っています。一方で、当初は就労を希望していた高齢者が、相談を重ねるなかで、収入よりも地域とのつながりや、自身のスキルを活かしたいというニーズが顕在化し、就労ではなくボランティアを選んだ例もあります。地域包括ケアシステムによりさまざまな福祉施策と連携していますので、自身のニーズに応じた活躍の場を探すことも可能です」スキルアップを目ざして多彩なセミナーなどを開催2017年から2019年の事業においても総社市生涯現役促進協議会事務局(総社市保健福祉部長寿介護課)の林直方課長

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