エルダー2019年9月号
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特集地方・地域が発信する高齢者の働き方エルダー19という立地を活かせる事業で、なおかつ、農業従事者の高齢化や後継者不足など、日本の農業が直面する課題のなかに潜在需要を見出し、古紙パルプ工場から植物工場へと転換。新会社としてイノベタスを設立した。ちなみに「イノベタス」とはラテン語で「革新」の意味である。社員に農業大学出身者やIT経験者など、植物工場に関連する分野の若手社員を迎えて、2015年に初出荷。その後も試行錯誤を重ね、高品質の野菜を市場に安定供給するまでに成長を遂げた。しかし、さらに収益を上げるためには、野菜をより大きく生育させ、短期間での収穫を実現させなくてはならない。そのためにも、生産面だけでなく、設備や作業効率も含めて工場を総体的に把握し、マネジメントができる人材が必要な段階に来ていたという。そこで同社では、メインバンクである地元銀行に相談を持ちかけた。同社の取締役兼企画・管理部長の和田仁ひとし氏は、「私がもともと銀行出身ということもあり、銀行であれば、当社が必要としている人材などの情報を持っているのではないかと考えたのです。総合的なマネジメント能力に長けており、工場長が任せられる人材が富士市近隣にいないか。例えば、定年後第二の人生を新しい職場で始めたい人はいないかと相談したところ、プロフェッショナル人材事業を紹介されました」と話す。以前から地元銀行と連携していた望月サブマネージャーは、銀行の担当者からイノベタスの相談を受けた際、プロフェッショナル人材事業とパートナーシップを結ぶ大手総合化学メーカーの存在が頭に浮かんだという。「当事業では都市部大企業と連携した人材交流を行っており、メーカー、商社、銀行など、日本を代表する大企業35社とパートナーシップを締結しています。そのなかで、大手総合化学メーカーの人事担当者とも情報交換をしており、イノベタスの求人ニーズを伝えました」とマッチングの経緯を説明する。将来性のある新しい産業と若手の育成に魅力を感じて入社を決意こうしてマッチングされた人材が、現在、イノベタスで取締役兼工場長を務める平ひら澤さわ一かず範のり氏だ。先の大手総合化学メーカーで生産技術の開発にたずさわった後、関連会社で代表取締役を務めた人物で、技術面のみならず、従業員のマネジメントの実績もある。和田部長は「経歴は申し分ありませんでしたが、当社は創業間もないベンチャー企業。入社してくれるとは思えず、断られることも覚悟のうえでした」と当時の心境を振り返る。一方の平澤氏は、60歳の定年退職を目前に控え、定年後は他社で働くことを検討しており、在籍していた大手総合化学メーカーの人事部へ相談を行っていた。平澤氏は、当時から静岡県に住み、神奈川県川崎市の職場まで新幹線で遠距離通勤をしており、勤務場所にこだわりはなかったが、自宅に近ければなおよいと伝えたところ、静岡県プロフェッショナル人材戦略拠点からの求人情報を紹介された。「人事部を通して、当社(イノベタス)を含む戦略拠点の求人情報を複数紹介してもらいました。入社の決め手となったのは、植物工場という、これからのニーズが見込まれる産業で、左から、イノベタスの和田部長、平澤工場長、静岡県プロフェッショナル人材戦略拠点の望月サブマネージャー

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