エルダー2019年9月号
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2019.920会社の将来性を感じたから。『野菜栽培』という視点で見ると、私にとっては未知の分野ですが、『生産性向上』や『品質管理』の視点で考えれば、私がこれまでやってきたことと考え方は同じです。何より、若い社員が多く、私のこれまでの経験を活かし、彼らの力になれるのではないかと思いました」(平澤氏)。大企業でつちかった論理的思考をベースに組織の整備をすすめる初めての顔合わせからおよそ半年後の2017年1月1日、平澤氏はイノベタスに入社し、同時に工場長に就任した。和田部長は、「立上げから無我夢中で野菜栽培に取り組んできましたが、作業マニュアルはなく、組織づくりもほぼ未着手。ソフト面、ハード面ともに整っていなかった状況を、平澤工場長にどんどん整備してもらっています」と、2年半の平澤工場長の功績をあげる。平澤工場長の仕事の基本は、「とにかく論理的に考えること」。「今日収穫したレタスはなんとなく小さい」ではなく、定量化して、データをとり、見える化を図った。設備面では電気の使い過ぎによる負荷を分散するなどの対策を講じ、また、機器の定期的な保全チェックを行うようにした。さらに、工場の生産体制についても、足りていなかったパート社員を増員し、社員とパート社員の仕事内容を整理し、再度組み立て直した。戦略拠点の望月サブマネージャーは、「中小企業は自社の経営課題に対する認識が不十分なところが多い一方、業務内容は把握しているので、外部の優秀な人材を招くことで、課題の見える化と解決を図ることができるのです」と、プロフェッショナル人材の強みを述べる。定年後の地方中小企業への就職が社会貢献につながる事業立上げから4年目を迎えた工場は、経年劣化が進んでおり、設備のメンテナンスが喫緊の課題となっている。コストダウンや生産技術の向上も重要となるなか、若手社員が希望を持って仕事ができる環境をつくることが一番のやりがいと話す平澤工場長。「大企業のような教育の仕組みがなく、若手社員は日々の業務に追われています。大事なのは論理的な思考力です。実験のデータを取り、レポートにして提出すること、それもきちんと要点が伝わる内容になっているかどうか。そうしたことを一つひとつ若い社員たちに教えていくことが、事業の成長のためにも一番大切です」今回のマッチングの成功を受けて、イノベタスでは、新たなプロフェッショナル人材の採用を進めている。和田部長は「高齢でも精力的に働きたいという方は、潜在的にたくさんいると思います。持っている知識や経験を活かし、ぜひ、中小企業への再就職に挑戦していただきたいですね」と話す。また、平澤工場長も「大企業で働いてきた人のなかには、中小企業に就職しても何もできない、と考えている人もいるかもしれませんが、実際に入社したら、貢献できることがたくさんあることに気づくはずです」と、定年後の中小企業への再就職を後押しする。定年後の第二の人生を、スキルと経験を請われて地方の中小企業でスタートさせることは、地方創生に貢献するという意味でも価値のある再就職といえそうだ。工場内でレタスの生産を行っている

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