エルダー2019年9月号
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特集地方・地域が発信する高齢者の働き方エルダー21知事の決断から始まった福岡県は、2012(平成24)年に「70歳現役応援センター」(以下、「センター」)を開設し、高齢者への職業紹介を始めました。全国で初めての試みです。筆者は、2010年に設置された「福岡県70歳現役社会づくり研究会」の委員長を務め、「センター」の設立に関わる機会を得ました。そのときの議論をふり返りながら、「センター」の意義を考えてみたいと思います。この事業は、当時の麻生渡わたる知事の強い思いが結実したものだといえます。4期目の終わりにさしかかっていた麻生氏は、高齢化が急速に進む日本社会にとって、元気なうちは働き続けて社会を支える側に居続ける高齢者が増えることが大切だと考えていました。また、働き続けることは健康によいという考え方にも共感し、「八掛けくらいでちょうどいい」ともいっていました。これは、暦年齢の8割くらいで自分の年齢を認識すればいいのではないかという意味です。すなわち、暦年齢60歳は48歳、70歳は56歳、80歳でようやく64歳ということになります。私たち日本人には、まだまだ活躍できるのに、年齢で自分をしばってしまう傾向があります。麻生氏はそういった意識を払ふっ拭しょくしたいという思いも持っていました。また、当時のハローワークでは、若年層や中堅層への対応が中心となり、高齢の求職者への対応はむずかしい状況にありました。他方、企業側の事情として、必要な人材が確保できないという問題が発生していました。人材募集をしても応募者がゼロという状況が、中小企業を中心に常態化しつつありました。企業としては、能力、意欲、体力があるのなら年齢にはこだわらないといいつつも高齢者にはむずかしいだろうという意識が強く、働きたいと思っている高齢者とのマッチングがしにくいという状況がありました。麻生氏は、「地方自治体としてできることは何か」と考え、「センター」開設のための準備を始めました。多方面の協力を取りつける福岡県庁内にこのテーマを扱うプロジェクトチームを設け、準備に入りました。この事業は、県庁だけでできることではありません。福岡県経営者協会や福岡県商工会議所連合会などの経営者団体、日本労働組合総連合会福岡県連合会(労働組合)、福岡県シルバー人材センター連合会や福岡県社会福祉協議会などの高齢者団体、特別寄稿 福岡県では、全国に先駆けて高齢者の活躍の場の拡大に向けた取組みを行ってきた。その中核をになっているのが、「福岡県70歳現役応援センター」。高齢者雇用の推進に向けた企業への働きかけや、専門相談員による高齢者への就業支援、NPO・ボランティアなどの社会参加支援に取り組んでおり、その取組みは他地域へも広がりをみせている。本稿では、同センターの設立にかかわった藤村博之先生に、同センターによる地方・地域発の高齢者の活躍推進に向けた取組みについて、ご紹介いただく。法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授 藤村博之「福岡県70歳現役応援センター」の設立にかかわって

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