エルダー2019年9月号
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特集地方・地域が発信する高齢者の働き方エルダー23建設会社が官庁の入札に参加しようとする際、一定数の一級建築士を擁ようしていることが求められます。大手の建設会社を65歳で退職した人がセンターを介して中小の建設会社に雇用され、第一線で活躍している例もあります。働いていると、毎日決まった時間に起きて身支度を整え、出社します。会社に行くと仲間がいて、いろいろな話題が出ます。同僚から何か頼まれて仕事をすると、「ありがとう」といってもらえます。一日の仕事を終えて、帰りがけに「ちょっと一杯」というのもあるでしょう。こういったことが生きがいにつながり、健康維持に役立っているのです。研究者のなかには、「仕事しか知らない、日本人の社会生活の貧困さである」と批判的にいう人がいますが、筆者は卑ひ下げする必要はまったくないと思います。前述のように働きたいという人がいて、雇いたいという企業があって初めて雇用は成立します。自分の力を企業が認めてくれ、価値のある仕事ができているなら、これほど素晴らしいことはないと思います。意識改革が必要だ!図表のなかに、「社会における意識改革」という表現があります。高齢者自身はもとより、企業も県民も高齢者が社会のなかで活躍することを当たり前のこととしてとらえ、もっと応援することが必要と説いています。私たちは深く考えることなく、この仕事は高齢者には無理だろうと思い込んでしまうことがあります。これまでもそうだったから、これからもそうだと無意識に思ってしまいます。これでは、高齢者の活躍の場は広がりません。意識改革の結果として生まれた一つの例が、コンビニエンスストア(以下、「コンビニ」)の店員として高齢者が活躍していることです。コンビニは、どちらかといえば若者向けのお店であり、高齢者が働く場所としてはふさわしくないと考えられていました。しかし、コンビニという業態ができてから約50年が経過し、高齢者にとってもコンビニは、日常的に買い物をする場所になっています。事実、利用客の年齢構成をみると、50歳以上が約4割というデータもあります。特に、独り暮らしの高齢者にとって、コンビニはなくてはならない存在です。2013年11月、福岡県とセブン‐イレブンは包括提携協定を締結し、高齢者を積極的に雇用することになりました。これは、全国初の連携であり、高齢者の活用に向けて画期的な一歩をふみ出しました。セブン‐イレブンがねらったのは、店舗における高齢者目線での接客サービスや高齢者世帯への宅配でした。若者にとっては何でもないことが、高齢者からすると「使いにくい」と感じることがあります。商品の配置や表示など、高齢者だからこそ気づける部分がたくさんあります。また、重いものを自宅まで持ち帰ることがむずかしくなっている高齢者に宅配サービスを提供することで、もっと利用しやすい店舗になることができます。高齢者から選ばれるお店になるには、店員のなかに高齢者がいることが不可欠であり、セブン‐イレブンはその点を重視したと考えられます。現在のコンビニは、単に商品を販売するだけでなく、さまざまなサービスを提供する拠点になっています。24時間営業が一般的であり、多くのコンビニは、店員の確保に頭を痛めています。店舗のオーナーは「センター」に求人を出し、「センター」はコンビニで求められている能力を保有している人材を紹介します。コンビニが提供するサービスが多様化するにつれて、店員にはいろいろな業務処理が求められています。宅配便の受付や引渡し、公共料金など各種料金の支払い、プリントアウトサービスなど、かぎられた店舗のなかにありとあらゆるサービスが詰め込まれています。店員は、それらへの対応を求められるため、覚えなければ

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