エルダー2019年9月号
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高齢者に聞くエルダー35ター)への出向を命じられます。その後、4年で出向が解かれると、今度は正式にIPCCに採用されました。IPCCは、「工業所有権に関する手続等の特例に関する法律」に基づく登録調査機関として特許庁からの受注のほか、民間企業や大学、特許事務所などからも依頼を受け、特許審査の関連業務を主として行っています。高度な技術的知識と経験が求められるため、技術分野で活躍した高齢の専門技術者の雇用に力を入れており、運よく、私もここで、新しい一歩をふみ出すことができました。出向時代も入れるといつの間にか16年も経ちましたが、いまもなお日々学ぶことが多く、若いころの向学心を思い出し、自分を奮い立たせています。柔軟な働き方を実現して、シニア世代を積極的に登用するIPCCの取組みは高く評価されており、平成30年度「高年齢者雇用開発コンテスト」※2で優秀賞を受賞している。知的財産の保護にかかわる喜び私は現在、「分類付与業務」と「検索業務」に従事しています。業務内容は出向のころとあまり変わりません。業務を簡単に説明すると、分類付与業務とは日本に出願された特許について、ある一定のルールに基づいて、どういう技術かわかるように分類の記号をつけていくという作業です。これらは未公開案件なので、取扱いには緊張感がともないます。また、検索業務とは、出願人から出された審査請求に基づいて、過去に似たような特許がないかどうかデータベースを検索する作業です。特許庁に出向き審査官と対面しながら検索の結果を報告することもあります。知的財産保護という任務には、日々気を引き締めて取り組んでいます。日本の審査精度は世界有数の高さを誇るといいます。ですから、私も精度向上のために少しでも貢献できたらと研けん鑽さんを重ねています。とにかく特許出願に盛り込まれた最先端技術を理解できるかどうかが鍵です。私の場合、応用化学の分野ではこれまでの経験が役立っています。また、経験していないことでも、かつて資格を取るために勉強したことが力になっていますし、たとえわからない分野であっても先輩がたくさんいますから、一つずつ教わりながら、特許という広い世界を夢中で歩いてきました。入職後すぐに2カ月にわたって「調査業務実施者育成研修」があり、修了後もOJTで学ぶ機会が常にあったことは幸いでした。緊張と緩和で明日も元気にIPCCでは67歳までの技術者を「主席部員」と呼び、68歳以降は「調査員」と名称が変わります。私もこの4月から調査員になりました。調査員は業務量が選択でき、ライフスタイルに合わせて無理なく仕事を調整できます。毎月の勤務日数も3種類から選べますが、私は常勤を選択しました。生活にリズムが生まれると思ったからです。フレックスタイム制なので、ラッシュの時間を避けて通勤することができます。集中力が問われる仕事ですので、日々の生活でオンとオフの切り替えを心がけています。緊張と緩和を節目ごとにうまくくり返してきたことが長く勤めてこられた秘訣でしょうか。遊ぶときはしっかり遊ぶことです。嬉しいことに、IPCCはクラブ活動が盛んで、私もスキークラブとテニス同好会に入っています。スキークラブは5年ほど部長を担当、現在は副部長で、いまでも年間20日は滑っています。テニス同好会は部員が80名を超える大所帯で、年2回の合宿は常務にも参加していただき、実に楽しい時間です。ソフトボールも好きで、地域の町内対抗戦では捕手を担当。投手と自分の年齢を足すと140歳になるそうで地元でも評判のチームです。大病をしたことがありますので、身体を丹念に動かすことを大切にしています。私の採用以降、JTからIPCCに採用される高齢技術者が少しずつ増えているそうです。これからは、生涯現役の道を楽しみながら切り開くことが、私の新たなミッションとなるようです。※2 高年齢者雇用開発コンテスト…… 企業が行った、高齢者がいきいき働くことのできる職場づくりの事例を募集・収集し、優秀事例について表彰を行っている。厚生労働省と当機構が主催

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