エルダー2019年9月号
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エルダー41くか、社会貢献に結びつけていくかということも、本学の大きな目標の一つです」多彩なカリキュラムと異世代共学で受講生の価値観を広げる創立の趣旨にも「受講生が〈自由な市民〉としての生き方を自らデザインできるようにサポートする」と謳うたう。ではどのようにしたら生き方を自らデザインできるようになるのか。同大の教育システムを見てみたい。一つは多彩なカリキュラムである。「エイジング社会の教養科目群」、「コミュニティデザインとビジネス科目群」、「セカンドステージ設計科目群」の三つ(各15科目)があり、自由に選択できる。教養科目群には「古典として読む旧約聖書」、「東洋思想からの問い」など古今東西の知的財産に加え、「壮年期・老熟期の生涯発達心理学」など、シニア層を意識した独自の科目もある。コミュニティデザインとビジネス科目群は、ソーシャル・ビジネス、NPO活動、各種のボランティア活動について実践的に学ぶ。「シニアが輝くライフスタイル」や「修了生が語るアクティブシニアの生き方」などユニークな科目もある。セカンドステージ設計科目群は、食・健康・住まいなど自分の将来を見据え、活き活きと生活するシニアの「人生設計」の立案を支援する。「食と健康の科学」、「セカンドステージの住まいづくり」、「健康長寿とアンチエイジング」、「高齢者の生活と介護保険」など実用的な科目が用意されている。こうした専門科目以外に必修科目として各教員が毎回違うテーマで講義するオムニバス講義※2「学問の世界」がある。野澤副学長も「現代社会と民法」の科目を担当している。講義の特徴についてこう語る。「講義は問題を一緒に考えていくスタイルでやっています。これまで法科大学院で教えていましたが、法科大学院では法律家になるための知識の伝授が中心です。本学では知識の詰め込みよりも、むしろ考え方を身につけてほしいと思い、じっくりと考える素材を与えて議論するようにしています。こちらから絶えず質問し、考えて答えてもらうのですが、社会経験が豊富なみなさんですので本当にいろいろな考え方や意見が活発に出てきます。教える側にとってもおもしろいし、よい刺激になっています」講義は4時限(15時20分〜16時50分)と5時限(17時10分〜18時40分)の時間帯に実施される。春学期と秋学期のほか、8〜9月には夏期集中講義が行われる。さらに上記の科目以外に立教大学の全学部学生を対象に開講している授業(全学共通科目)も一定の範囲内で受講できる。これを同大では「異世代共学」と呼んでいる。これこそ親子、孫と子ほど世代も違う学生がともに学ぶことで異なる価値観や考え方などを知る多様性を受容する場となっている。受講生の「気づき」と「発見」をうながすためのゼミナール2番目の特徴は、すべての受講生のゼミナール参加と修了論文の作成だ。受講生は八つのゼミナールのいずれかに所属し、担当教員の指導を受け、1年をかけて修了論文の作成を目ざす。一つのゼミナールの定員は10人前後。教員が出席する本ゼミと受講生だけで運営する自主ゼミが交互に開催され、あくまで受講生の自主的・※2 オムニバス講義……毎回教えるテーマが変わる形式の講義野澤正充副学長高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―

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