エルダー2019年9月号
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2019.942主体的活動が基本であり、担当教員は論文テーマの選定や、そのための学習・フィールドワークの方法から論文作成の指導について徹底してサポートする。野澤副学長は「ゼミナールの仲間と議論すると、いろいろな考え方の人がいることがよくわかります。自分の考えを主張しても必ずしも受け入れられるわけではありません。異なる意見や考え方を知ることで新たな気づきと発見があり、受講生相互の絆が深まります。シニアになって長い論文を書くことは大変ですが、『論文を書く』という行為は、クリエイティブな活動ですし、『自分とは何か』という自らの内面に迫るものでもあります」と、その意義を語る。実際にゼミナール参加と修了論文の作成は受講生にとっても得がたい経験となっているようだ。同大に2017年に入学した佐藤勇ゆう一いち氏(69歳)はゼミナール活動についてこう語る。「修了論文のテーマを何にするのかを決めるのですが、ゼミのメンバーがそれぞれ中間発表し、みんなで批評しながら固めていきます。私は国内旅行をするなかで古い町並みがどのように保存されているのかに興味をもったのですが、その話を先生にすると、それをまとめてみればどうかと示唆されました。テーマが決まると執筆に入りますが、その内容や文章の書き方行っている。そのほかに「かがやきライフ研究会」、「日本に住む外国人を考える会」、「ソーシャルビジネス研究会」など多様な活動を展開している。驚くのは修了生の学習活動の継続性とネットワークの広がりである。受講して終わりという一般的な生涯学習講座とは異なり、大学での学びを契機に日常的な学習意欲を絶やすことなく継続し、その活動を大学時代に築いたネットワークで互いに支え合う仕組みを構築している。野澤副学長は「千人いる修了生のうち約400人が何らかの研究会に所属し、定期的に活動している。サポートセンターは修了生を社会につなげていくために設置したが、その広がりは予想以上の成果を上げている」と評価する。についての指導は非常に厳しく、文章を書くのが苦手な人にとっては1年間苦しんで書き上げることになります。それでもいままで漠然と興味があっただけの段階から、先生の指導やアドバイスを通じて、きちんとまとめ上げるきっかけをつくっていただいたことに感謝しています」佐藤さんは本科の論文完成後、専攻科でも論文作成に重点を置き、「日本の近代化遺産」というテーマで論文を書き上げた。「本を読むだけではなく、教室の外でも各地を訪ね歩いて話を聞くフィールドワークを通じて学ぶというステージをつくってもらった」と語る。社会貢献活動サポートセンターが学習活動の継続を支援3番目の特徴は、受講生・修了生による自発的な社会貢献・研究活動である。その一つの母体となっているのが「社会貢献活動サポートセンター」だ。受講生や修了生が社会との交流や社会貢献活動を促進するために設置され、登録された団体の活動を担当の教員や顧問がサポートする。現在13の登録団体があるが、団体の発足から運営まですべてをメンバーが自主的に行う。例えば1期生から在学生までの音楽好きが参加する「ウクレレ合唱団」は演奏と合唱の練習だけではなく、高齢・障害者施設での公演も佐藤勇一さん

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