エルダー2019年9月号
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ついては、通常と同様に割増賃金の支払いが必要です。まず、始業と終業時刻の双方を労働者の裁量に委ねることが必須とされています。ただし、必ず出社してもらうことを義務とする「コアタイム」を設定することもできます。逆に出退社が自由となる時間帯を「フレキシブルタイム」といいます。注意点としては、「コアタイム」が所定労働時間とほぼ同一である、または、「フレキシブルタイム」が極端に短いため、出退社の時間が労働者に委ねられたといえない場合には、フレックスタイム制の導入要件を満たさないおそれがあります。労働時間の把握方法3次に、フレックスタイム制では、「総労働時間」の設定が前提になっています。例えば1カ月単位で総労働時間を設定する場合は、毎月の労働時間の起算日を定めることで、「総労働時間」の計算期間が定まります。この計算期間を「清算期間」と呼びます。これらを基準に、「清算期間」中の実際の労働時間が、「総労働時間」を超えたか否かという観点で、労働時間管理を行うことになります。そのためには、清算期間中の実際の労働時間を把握するためにタイムカードなどによる時間管理が必要です。ただし、時間管理にあたり、1日ごとに遅刻や早退を気にする必要はなくなります。なお、コアタイムに対して遅刻が頻発する場合は、最低限の規律の維持のために懲戒処分の対象とすることや、人事考課などにおいて遅刻回数を考慮するような制度設計を行うことは可能です。一方、休憩について、フレックスタイム制の場合は、休憩時間も自由に取らせたいというニーズがあります。そのような場合には、一斉付与の対象から除外するために労使協定を締結しておく必要があります。フレックスタイム制における時間外労働と休日の設定4フレックスタイム制の場合、時間外労働の計算方法が通常とは異なります。原則として、フレックスタイム制における時間外労働は、1日または週単位ではなく、清算期間内の「法定労働時間の総枠」を超えた時間を基準として計算されます。「法定労働時間の総枠」の計算方法は、「40時間(週の法定労働時間)×歴日数÷7日」とされていますが、よく利用される法定労働時間の総枠は図表1のとおりです。フレックスタイム制を導入する際に、休日についても労働者の自由に委ねたいかもしれませんが、フレックスタイム制においても法定休日の設定は必要です。また、所定休日も定めておかなければ、総労働時間が法定労働時間の総枠を確実に超えることになるため、時間外労働を抑制するためには所定休日も設定しておくべきでしょう。なお、完全週休二日制を導入している場合には、法定労働時間の総枠の計算方法について、労使協定の締結により「8時間×所定労働日数」とすることが可能となるため、計算を簡便化することが可能です。1カ月を超える清算期間を設定するフレックスタイム制においては、本来なら清算期間のすべてを終えてから時間外労働を清算すればよいはずですが、過重労働防止の観点から、図表2に記載した1カ月ごとに週50時間以上を超えた部分については、時間外割増賃金を支給する必要があります。また、休日については、法定休日の労働は「休日労働」として計算し、所定休日の労働エルダー45知っておきたい労働法AA&&Q歴日数1カ月の法定労働時間の総枠歴日数2カ月の法定労働時間の総枠歴日数3カ月の法定労働時間の総枠31日177.1時間62日354.2時間92日525.7時間30日171.4時間61日348.5時間91日520.0時間29日165.7時間60日342.8時間90日514.2時間28日160.0時間59日337.1時間89日508.5時間図表1 法定労働時間の総枠歴日数31日221.4時間30日214.2時間29日207.1時間28日200.0時間図表2 週平均50時間以上となる月間労働時間数

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