エルダー2019年9月号
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エルダー49れたスケール(物差し)が国際的によく使われています。このスケールは14項目の質問からなり、それぞれの質問に「0~3点」をつけます。点数が高いほうが疲労の度合いが高いとしています。 ただし、このスケールは、質問票を書いてもらっている時点での疲労度というよりは、最近2週間から1カ月間程度の疲労を総体的に記入するものなので、記入時点での疲労感を把握することには向いていません。さらに、このスケールによって精神的疲労と身体的疲労の程度を把握することはできますが、疲労と関連している愁訴(症状)として知られている、抑うつ症状なども把握することはできません。 こうした点をふまえて、大阪市立大学医学部附属病院疲労クリニカルセンターでは、質問項目を64項目に増やして、疲労関連症状や背景となる日常生活習慣などの情報を十分に評価できる新たなスケールを開発しました。その疲労スケールでは、まず疲労を以下の八つの症状に分類して、各質問について「1~5点」で点数化します。1.疲労  (例:横になりたいぐらい疲れることがある、疲れた感じ/ちょっとした運動や作業でもすごく疲れる)2.うつと不安  (例:ゆううつな気分になる/不安で落ち着かない気分になる)3.注意力・記銘力の低下  (例:集中力が低下している/ちょっとしたことが思い出せない)4.痛み  (例:関節が痛む/このごろ足がだるい)5.過労  (例:ゆっくり休む時間がない/仕事量が多くてたいへんである)6.自律神経症状  (例:まぶしくて目がくらむことがある/冷や汗が出ることがある)7.睡眠  (例:どうしても寝過ぎてしまう/居眠りが多い)8.感染  (例:リンパ節が腫れている/のどの痛みがある) そして、総合的評価として、各症状の程度から疲労度※2を1~4段階で評価することができ、結果をレーダーチャート(図)で示すことで、回答者が疲労の特性を視覚的に認識することができます。 また、簡易的な疲労度の指標としては、痛みなどでも行うVisual Analogue Scale (VAS)があります。これは10㎝の線に自分の現在の疲労度を記してもらうものです。VASに関しては、日本疲労学会のホームページ上に検査方法が紹介されています※3。 高齢労働者の疲労度が気になる場合は、産業医などの専門家と相談のうえ、これまで紹介したような方法を使って疲労度を計ってみてはいかがでしょうか。その結果、疲労度が著しく高い場合は、対策を立てる必要があるかもしれません。※2 疲労度……大阪市立大学附属病院疲労クリニカルセンターでは、主観的または客観的指導によって疲労の度合いを数値化したものを疲労度と定義している※3 http://www.hirougakkai.com/VAS.pdfわたなべ・やすよし京都大学大学院医学研究科博士課程修了、大阪医科大学医学部・講師、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・センター長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長等を歴任し、現在は、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム・プログラムディレクター、理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・顧問を兼任。日本疲労学会・理事長。図 疲労スケールによるレーダーチャートの例(疲労度が1段階の場合)1. 疲労2.うつと不安3. 注意力・  記銘力  の低下4. 痛み5.過労6.自律神経症状7.睡眠8.感染

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