エルダー2019年9月号
52/68

2019.9502018(平成30)年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)により、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を実現するため、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム労働法)、「労働契約法」および「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)について改正が行われ、2020(令和2)年4月1日(中小企業への「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」〈パートタイム・有期雇用労働法〉の適用は2021年4月1日)から施行される。前編では、パートタイム・有期雇用労働法について解説をしたが、本稿では、このうち労働者派遣法の主な改正内容などについて解説する。同一企業内における不合理な待遇差を解消するための規定の整備1派遣労働者については、派遣労働者を雇用する事業主と、派遣労働者を指揮命令する事業主が異なることに加え、派遣先の一時的な人材ニーズに対応するために活用するケースが多いことから、待遇改善やキャリア形成が疎おろそかにされがちである。しかし、派遣労働者を適正に活用していくためには、派遣労働者であるという理由のみによって、通常の労働者との間に不合理な待遇差があってはならないものである。派遣労働者の待遇改善を図り、派遣労働者が納得感と意欲を持って働くことのできる環境を整備することは派遣元および派遣先の双方にとっての利益につながるものと考えられる。このため、派遣労働者については、現行では均衡待遇規定・均等待遇規定は存在せず、同種の業務に従事する派遣先の労働者との間での待遇に関する配慮義務規定などがあるのみ(労働者派遣法第30条の3)であったが、働き方改革関連法による改正後の労働者派遣法(改正労働者派遣法)では、不合理な待遇差を解消するための規定が整備された。具体的には、① 派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇 (派遣先均等・均衡方式)② 一定の要件を満たす労使協定による待遇 (労使協定方式)のいずれか※1を確保することを義務化している。①派遣先均等・均衡方式ア 均衡待遇規定・均等待遇規定   パートタイム労働者・有期雇用者と同様の考え方で、派遣元事業主に対し、その雇用する派遣労働者について、派遣先の通常の労働者との間で均等・均衡待遇を確保することを新たに義務づけた(改正労働者派遣法第30条の3)。具体的には、職務の内容(業務の内容+責任の程度)、職務の内容・配置の変更の範囲が同じ場合には、差別的取扱いを禁止する「均等待遇」(同条第2項)同一労働同一賃金の実現に向けて―正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止―《後編》厚生労働省 職業安定局 需給調整事業課別企画特※1  派遣労働者については、実際の就業場所が派遣先であり、待遇に関する派遣労働者の納得感の観点から、派遣先の労働者との均等・均衡が重要である。一方で、派遣先の労働者との均等・均衡を図ることで、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の所得が不安定となることが考えられることなどをふまえたもの 2020年4月1日より、同一企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇差の解消を目的に、「同一労働同一賃金」について定めた、パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法が施行される。先月号のパートタイム・有期雇用労働法の改正についての解説に続き、今月号では労働者派遣法改正の要点について解説する。

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る