エルダー2019年9月号
53/68

特別企画エルダー51同一労働同一賃金の実現に向けて 《後編》か、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情の相違を考慮し不合理な待遇差を禁止する「均衡待遇」(同条第1項)を図る必要がある。イ 派遣先の措置の規定の強化   派遣先についても、派遣元事業主からの求めに応じ業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施や、業務の円滑な遂行に資する福利厚生施設(休憩室、給食施設、更衣室)の派遣労働者に対する利用の機会の付与等の規定を強化した(改正労働者派遣法第40条の2第2項〜5項)。ウ 派遣先による情報提供   派遣元事業主が前記アの規定による義務を履行できるよう、派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者(図表1)※2の待遇に関する情報を派遣元事業主に提供することを派遣先の義務とし(改正労働者派遣法第26条第7項)、派遣元事業主は情報提供がない場合に労働者派遣契約を締結してはならないこととした(同条第9項)。②労使協定方式過半数労働組合または過半数代表者と派遣元事業主との間で賃金の決定方法等の一定の事項を定めた労使協定を書面で締結したときは、一部の待遇(①イの教育訓練と福利厚生施設)を除き、この労使協定に基づき待遇が決定される。具体的には、派遣労働者の賃金の決定方法について、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額と比較し、同等以上の賃金額であることなどを記載する必要がある(図表2)。※2  派遣先に雇用される労働者のうち、派遣労働者と待遇を比較すべき労働者であり、派遣先において選定される。具体的には、省令で、派遣先は書面の交付、ファクシミリ、電子メール等の方法により、比較対象労働者の選定理由やその待遇の内容などについての情報を提供することとした。ただし、労働者派遣契約で、派遣労働者の待遇決定方式を労使協定方式に限定する場合には、イの教育訓練と福利厚生施設に関する情報のみ図表1 比較対象労働者とは※派遣先は、①~⑥の優先順位により「比較対象労働者」を選定する。図表2 労使協定に定める事項① 「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者② 「職務の内容」が同じ通常の労働者③ 「業務の内容」または「責任の程度」が同じ通常の労働者④ 「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者⑤ ①~④に相当する短時間・有期雇用労働者※  ※ パートタイム・有期雇用労働法等に基づき、派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されている者にかぎります。⑥ 派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者※  ※ 当該労働者の待遇内容について、就業規則に定められており、かつ派遣先の通常の労働者との間で適切な待遇が確保されている者にかぎります。① 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲② 賃金の決定方法(次のア及びイに該当するものに限る。) ア 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金額となるもの イ 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に賃金が改善されるもの  ※ イについては、職務の内容に密接に関連して支払われる賃金以外の賃金(例えば、通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当)を除く。③ 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定すること④ 「労使協定の対象とならない待遇(法第40条第2項の教育訓練及び法第40条第3項の福利厚生施設)及び賃金」を除く待遇の決定方法(派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く。)との間で不合理な相違がないものに限る。)⑤ 派遣労働者に対して段階的・計画的な教育訓練を実施すること⑥ その他の事項 ・ 有効期間(2年以内が望ましい) ・ 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合は、その理由 ・ 特段の事情がない限り、一の労働契約の期間中に派遣先の変更を理由として、協定の対象となる派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと客観的な基準により範囲を定めることが必要です。「賃金水準が高い企業に派遣する労働者」とすることは適当ではありません。派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む地域において派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者であって、当該派遣労働者と同程度の能力及び経験を有する者の平均的な賃金の額【職種ごとの賃金、能力・経験、地域別の賃金差をもとに決定】(※)職種ごとの賃金等については、毎年6~7月に通知で示す予定です。

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る