エルダー2019年9月号
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特別企画エルダー53同一労働同一賃金の実現に向けて 《後編》裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備3労働者派遣法の均等待遇規定・均衡待遇規定は民事的効力を有するものと解されているが、派遣労働者にとって訴訟を提起することは重い負担となる。このため、派遣労働者がより救済を求めやすくなるよう、「均等・均衡待遇」、「労使協定に基づく待遇」、「待遇差の内容・理由に関する説明」等について、裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定を整備した(改正労働者派遣法第47条の5から第47条の9)。具体的には、「都道府県労働局長による紛争解決の援助」および「派遣労働者待遇調停会議による調停」があり、都道府県労働局長または調停委員が公平な第三者として紛争の当事者の間に立ち、当事者の納得が得られるよう解決策を提示し、紛争の解決を図ることを目ざすものである。改正労働者派遣法の円滑な施行に向けた取組み4企業が改正労働者派遣法に円滑に対応することができるよう、厚生労働省では以下のような取組みを行っている。(1) 「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(ガイドライン)正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差が不合理なものでないのか等の原則となる考え方と具体例について、基本給、賞与、手当等の個々の待遇ごとに示したもの。(https://www.mhlw.go.jp/content/000465454.pdf)(2) 各種マニュアル等の策定・厚生労働省ホームページでの公開ア パンフレット   派遣労働者の同一労働同一賃金の概要(平成30年労働者派遣法改正の概要)を説明している。(https://www.mhlw.go.jp/content/000469167.pdf)イ  不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編)   具体例を付しながら、各種手当、福利厚生、教育訓練、賞与、基本給について、点検・検討の手順を詳細に解説している。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03984.html)ウ  労使協定方式における「同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準」   労使協定方式の要件である「同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準」(令和2年度適用)を示している。(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html)(3) 働き方改革推進支援センターにおける相談援助働き方改革に全般に関する相談・支援のためのワンストップサービス拠点として、民間団体等に委託し、47都道府県に設置している※3。雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に向けた非正規雇用労働者の待遇改善に関することだけでなく、時間外労働の上限規制への対応に向けた弾力的な労働時間制度の構築や、生産性向上による賃金の引き上げ、さらには、雇用管理改善による人手不足への対応や、助成金の活用など、労務管理に関する課題について、社会保険労務士等の専門家が無料で相談支援する体制を構築している。電話・メール・来所による相談やセミナーの開催だけでなく、働き方改革推進支援センターの専門家が企業・団体を訪問し、就業規則の見直し、労働時間短縮、賃金引き上げに向けた生産性向上などに関するコンサルティングを通じて、個々の事業主の状況に応じた改善計画案の提案も行っている。(4)都道府県労働局における相談援助制度内容に関する問合せ等について相談することができる。※3  各都道府県の働き方改革推進支援センターについては右記URLをご参照ください。https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000505432.pdf

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