エルダー2019年9月号
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特集地方・地域が発信する高齢者の働き方エルダー7はじめに〜超高齢未来と生涯現役社会理想の未来社会を築けるかどうかに関する大事なキーワードに、「高齢者」と「地域」があります。日本は人口減少局面下にありますが、少なくとも高齢者だけは2040年まで増え続ける見通しです。その高齢者が、活き活きとした高齢期をすごすことができるのか、一人ひとりの人生にかかわる問題であると同時に、地域全体の活力や社会的コストにも影響を及ぼす極めて重要な課題です。他方、少子高齢化にともなうさまざまな社会的課題の解決が「地域」に求められてきています。生活を支え合う基本単位の「家族」の形が変容するなか、〝おひとりさま(単身世帯)〞が増加の一途にあり、夫婦世帯の子どもの数は減少傾向にあります。家族で支えあう「家族力」が低下してきているなか、安心して生涯を送るためには、自助の強化や社会保障に頼るだけでは限界があります。子育てや福祉の問題を含めて、地域のなかで支え合う〝地域力〞の強化が今日的に問われています。筆者は〝「生涯現役社会」の実現なくして、未来はない!〞と2015(平成27)年に行われた「一億総活躍社会に関する意見交換会」のなかで述べてきましたが、改めて今日的にその社会の実現が待たれます。生涯現役社会の実現は「個人」と「地域社会」の両面に多面的な効果をもたらします。それぞれの地域で年齢にかかわらず活躍し続けられる「生涯現役社会」を真に実現できるかどうか、その地域の未来の様相を左右する極めて重要な課題といえます。都道府県別に見た高齢者雇用の現状では近年における「高齢者の雇用状況」はどうなっているでしょうか。図表1は、総務省「平成29年就業構造基本調査」結果から、65―74歳の高齢者の就業状況について都道府県別にみたものになります。縦軸が「有業者」の割合です。上の方ほど働いている高齢者が多い地域であることを示しています。横軸は無業者のなかで仕事を求めている人の割合です。右の方ほど「働きたいが働くことができていない」人が多い地域であることを示しています。なお、高齢者の高齢化の影響を除くために、ここでは65―74歳の層に絞ってみています(75歳以上の後期高齢者が多い場合、有業者率が低く出てしまう可能性があるため。図表1の右表には「65歳以上」総 論地方・地域における高齢者雇用の現状と展望ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田展のぶ弘ひろ

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