エルダー2019年10月号
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特集エルダー112019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠにより、新規採用の高齢職員に対して充実した教育が行われ、未経験の高齢者であっても、戦力として長く働き続けることが可能となった。・若手職員とのペア就労高齢職員の体力的・精神的負担の軽減と、仕事を通じた知識・技能の継承を目的に、若手職員とのペア就労を所属長の指示のもと実施している。例えば、寝たきり患者の褥じょく瘡そう(床とこ擦ずれ)防止のために行う背抜き※業務は、体力的な負担がともなう作業であると同時に、経験も必要な業務であるが、高齢職員にとっては体力的に厳しく、若手職員にとっては経験が浅いため作業を適切に行えないケースがみられる。そこでペアを組み就労させることで、高齢職員の負担が軽減される一方、若手職員は高齢職員の指導を受け経験を積むことができる。これらの取組みにより、高齢職員は仕事に対する誇りを持てるようになり、モチベーションの維持が図れるほか、ペア就労が生み出す技術継承の実績は、人材育成にも大きな役割を果たしている。(5)健康管理・安全衛生健康管理の取組みとしては、永年勤続表彰の適用範囲の拡大があげられる。永年勤続表彰は勤続10年から5年ごとに実施し、対象者には副賞として海外旅行券の支給と特別休暇の付与を行っていたが、これまで65歳以上の高齢職員は適用外であった。2011年から65歳以上に適用を拡大し、その結果、高齢職員は自身の健康管理に留意して永年勤続表彰を目ざすようになり、健康に対する意識が向上した。また、横になれる畳の休憩室を設置。休憩時間にゆっくりと休めることで、高齢職員の体力の回復が図れている。さらに、2019年から建物内を全面禁煙とすることで、受動喫煙による健康被害の防止を推進している。(6)高齢職員の声Aさん(71歳、男性)は、42歳から看護師として勤務、70歳まではフルタイムで働いていた。現在はセラピーガーデンの管理を担当。ホースセラピーのためのポニーの世話やピザ窯づくりの技術を、現役職員に継承している。海外暮らしが長く、帰国してから看護師資格を取得した苦労人で、看護師学校の教員の経験もある。「私は好奇心が強いので、これから先もさまざまなことに挑戦していきたい」と話す。また、Bさん(70歳、女性)は51歳のとき、専業主婦から看護アシスタントとして勤務をスタートさせ、働きながら介護職員初任者研修を修了。現在は看護アシスタントリーダーとして病院内の環境整備や看護アシスタントへの指導を担当している。「高齢の患者さんのリハビリになればと、趣味を活かして手芸を教えることもあります。患者さんはもちろん、若い職員さんとの会話が楽しく、毎日元気に働かせてもらっています」と語る。(7)今後の展望「誰もが社会に参加しステップアップできる」よう、病院や施設を利用されるみなさんの心にしっかり寄り添い、医療・介護・福祉サービスのさらなる充実を目ざす同法人は、高齢職員の能力や体力の低下を補う機械設備を積極的に導入し、高齢職員が長く元気に働ける職場環境の整備を進めていきたいと考えている。新たな課題に向かって不断の努力が続く。※ 背抜き……要介護者の背中とベッドの間に手を入れて圧を分散し、褥瘡を防止することセラピーガーデンの管理を担当しているAさん

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