エルダー2019年10月号
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2019.1014形態の適用を受けている。また、適用を希望しない高齢従業員はフルタイムで働いており、定年後も定年前と同様の職務を担当できることから、ほとんどの高齢従業員が継続雇用を希望している。・処遇(賃金、退職金など)定年後の継続雇用者も含めて全員を「正社員」として雇用しており、従業員の処遇の差は一部資格保持者を除き、ほぼない。定年後も役職を継続する場合には相応の役職手当が支給される。賃金は勤務時間の減少により下がるが、時給換算でみると定年前より高額になる。退職金は特定退職金共済制度(特退共)に加入しており、原則定年時に支払われるが、支払い時期は本人と相談のうえ、変更も可能である。(2)高齢従業員を戦力化するための工夫・高齢従業員の役割の明確化定年後の高齢従業員の業務は、専門性を活かすために従前からの業務を継続することとしている。加えて、全部署共通の高齢従業員の役割として「若手従業員への技術の継承」や「品質チェック機能、工程管理」などをになっている。これは書類などで提示しているものではないが、つね日ごろから社長が従業員に対して説明・指示をくり返しており、高齢従業員は自らの役割を自然な形で受け止めている。役割を明確化することにより、高齢従業員自身の居場所(拠より所)の確保とモチベーションの維持・向上に結びつき、発注者への提案力が各段に高まった。若手従業員への技術継承に関しては、高齢従業員と若手従業員がペアを組んで就労するなかで進められることが多い。部門の責任者は業務内容に応じて、組合せを決め、若手従業員がさまざまな知識や技術を習得できるよう適切な組合せを行っている。(3)意識・風土の改善・ドローン技術の導入屋外での業務が中心で、測量などの現地調査は急な斜面を登ったり、足場が悪い現場も多い。従前は、測量用の機材を持ち、現場へ向かい、足元の不安定な場所で測量業務を行っていたが、高齢従業員にとっては体力的な負担も大きくかつ危険をともなう作業であったことから、リスク削減と作業の効率化のためにドローンを導入した。 導入によって、比較的安全な場所でドローンを操縦し、測量現場上空から撮影した映像やデータをもとに、図面の作成が可能になり、作業負荷は軽減され、労働災害のリスクも大幅に軽減された。また、山間地のダムや河川の流量確認などについても、ドローンにより容易に行うことが可能となっている。ドローンの操縦は資格を有する若手従業員が行うが、現場での対応や得られた情報の分析については、ベテラン従業員の勘かん所どころを活かした業務実施体制を敷いている。ドローンを活かした業務受注は始まったばかりであるが、新技術を活用しつつ、蓄積されたノウハウを活用して一層の業務展開を目ざしている。(4)能力開発に関する改善・仕事の見える化2002年から各部門の高齢従業員を中心にISO認証を取得する事業に取り組んだことがきっかけとなり、「仕事の見える化」に着手した。各部門の高齢従業員は、若年層への技術継承を目的に「作業手順書」や「マニュアル」、「業務フロー図」などを作成。工程管理、実行予算管理体制を構築し、仕事の見える化を実現した。「作業手順書」や「マニュアル」などは、社内PC上で共有データベース化されており、従業員のだれもが閲覧できることで体系的な教育が可能となり、OJTによる研修が容易になった。形のある「作業手順書」をもとに、若手従業員と高齢従業員によるOJTの実行がコミュ技術継承のため、高齢従業員(右)と若手(左)がペアを組んで業務にあたる

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