エルダー2019年10月号
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特集エルダー152019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠニケーションの強化にもつながり、役割を明確化することで高齢従業員のモチベーションは向上している。  (5)健康管理・安全衛生健康管理の画期的な取組みとしては、全従業員を対象にした人間ドックの際に、頸動脈超音波検査を実施、動脈硬化などの早期発見に努めている。また、今年度からは40歳以上の従業員を対象に5年ごとの脳ドックを取り入れ、さらに健康意識を高めるため、休憩室に血圧計を常設し、自由に利用できるようにした。福利厚生の取組みでは、有給休暇取得率の向上を目ざしており、昨年度は約70%と高い割合を示している。この背景には時間単位の有給休暇を取得できるようにしたことがある。同社の社長は、「知識・技術の宝庫である高齢者は、会社にとって大きな戦力である」と考え、高齢従業員をはじめ全従業員の健康づくりに対し強く取り組む姿勢を示していることが、従業員全体の健康に対する関心度の高まりにつながっている。また、「コミュニケーションの強化が会社全体を活性化する」という考えのもと、社員旅行などのさまざまなイベントを実施している。先ごろ開催された創業50周年の記念パーティーには、従業員だけでなく家族やOBも多数参加し、人を大切にする社風が内外に示された。(6)高齢従業員の声測量部門のAさん(67歳、男性)は48年の勤続を誇る。現在は週3日勤務の柔軟な雇用形態をとっており、人間ドックや健康診断の結果を参考にしながら、無理のない範囲で現場と事務仕事の両方をこなし、主に若手の育成、技能伝承を担当している。若手に対しては、大きな仕事をやり遂げたときの達成感を味わってもらいたいという気持ちを持って指導にあたっており、技術以外にも顧客への接し方や言葉遣いにも心を配っている。Aさんは「ドローンの操縦など新しい技術に関しては若い人から教えてもらうこともあり、ペア就労ではお互いに学ぶことがあります」と話す。総務部門のBさん(63歳、女性)は当人の希望により継続雇用後も経験年数の長い定年時の職務をそのまま継続するとともに、総務課長から次長職に昇進した。Bさんは中途入社であるが、職場環境のよさもあり、27年間勤続している。Aさん同様、通常業務に加えて若手の育成も担当しており、日々楽しんで業務に取り組んでいる。「柔軟な働き方が可能で、有給休暇も非常に取りやすく風通しのよい職場であるため、高齢者にはとても魅力的な会社です」とBさんは語る。(7)今後の展望「生涯現役」を経営方針に掲げる同社では、高齢従業員のモチベーションアップのために制度の改善や健康管理を含めた福利厚生の充実、あるいは最新技術を導入してリスク削減と作業の効率化を図っている。今後は取組みを一層強化し、将来的には継続雇用制度の基準の廃止を考えている。また、健康推進対策室(仮称)を設置し、健康管理の見直しや、有給休暇取得促進、労働時間の短縮も視野に置いている。諸課題に向かって、飽くなき努力が続く。総務部門で働くBさん図面作成業務を行うAさん

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