エルダー2019年10月号
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2019.1018の健康を実現する施策を行っている。「身体の健康」は「健康管理体制の充実」であり、「経済の健康」は「事実上の定年廃止」や「賃金水準の維持」である。また、「心の健康」は、従業員自らの申し出に基づく「現場施工責任者の任命」制度やボランティア活動を通じた弱者に寄り添う心の大切さを学習することである。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善・定年の延長2005年まで60歳定年であったが、創業時から勤めている従業員の1人が60歳を迎えた2006年に定年を65歳に延長。当該従業員は技術力が高いだけでなく、仕事への意欲や姿勢が素晴らしく、会社にとって必要とされる人材であったことから、定年制度を見直した。合わせて65歳を超えた後も運用により年齢の制限なく働けるようにした。現在、70代の従業員は4人で、うち3人が施工部の相談役として勤務し、若い従業員の尊敬を集めている。また、1人は女性で、営業総務部で経理を担当している。・賃金水準の維持定年後、引き続き勤務した場合でも希望するかぎり働き続けることができ、賃金水準は現役のまま減額しない。昇給は65歳まで続き、66歳以降も高い賃金水準を維持している。年齢に関係なく仕事内容はそれまでの仕事を引き続き担当し、役職者は役職を継続。配置転換は、本人の希望により施工部・管理部・営業総務部をまたいだ形でも可能としている。・人事評価制度15年ほど前に人事評価制度を導入した。人事評価は人物評価、力量評価、資格認定状況により行われ、昇進や基本給、決算賞与に反映される。人物評価は、毎月「個人目標達成状況報告書」を作成し、上司および社長の評価を受ける。項目としては、個人目標、目標に対する結果・反省、改善提案・作業効率向上提案などである。少人数の企業であるため、社長が全員の状況を把握できる仕組みとなっている。資格認定は主任技術者から作業責任者まで6種類あり、従業員の資格取得状況などに応じて異なる。要件としては、主任技術者は工事の品質管理を行う者のことで、一定の経験年数を経て一級または二級電気工事施工管理技術検定に合格した者、作業責任者は各工事現場の施工に関する責任者で、第一種または第二種電気工事士資格を有し、社長に承認された者である。(2)高齢従業員を戦力化するための工夫同社は役職定年制を実施していないため、年齢に関係なく役職を継続することが可能である。役職は主任から統括部長までの6ランクを基本としている。65歳到達時点は、65歳以降の勤務の意思確認を行う節目と考えており、本人の健康上の問題や、親の介護などの不安を抱えて役職を継続することがむずかしくなった場合には、相談のうえで役職や勤務日数、勤務時間の見直しを行っている。例えば、弱視の従業員に対しては、帰宅時の安全を考慮して日没の20~40分前に終業時刻を設定して、明るい時間に帰宅できるようにしている。この際、就業時間を減じた分については、もともと短かった土曜日の勤務時間を延ばして調整している。このような柔軟な勤務形態により、安心して長く働けることにつなげている。高齢従業員が活躍する姿は、それ自体が若手従業員へのメッセージとなっている。社内のコミュニケーションが活性化することで従業員全体の満足度が上がり、その満足度が従業員の家族や取引先にも伝でん播ぱし、ひいては地域貢献にもつながるという好循環を生み出している。(3)意識・風土の改善自社のことを「松川一家」と呼び、従業員を家族とみなし、一人ひとりが経営理念の実行者であり、体現者であると位置づける社風が醸成されている。責任感と仕事へのモチベーションを高める仕組みとして、現場施工責任者の任命制度があり、各工事の現場施工責任者は自らの申し出制とし、立候補者は自分をプレゼンテーションするレポートを提出し、みんなで話し合って決めている。各現場は協力会社を合わせ

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