エルダー2019年10月号
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特集エルダー192019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠると50人から最大150人となり、1カ月を超える現場では、高齢従業員は豊富な経験を活かしてサポート役を担当している。また、社会貢献活動を通じて弱者に寄り添う心の大切さを学ぼうと、ボランティア活動も活発に行っている。同社の行動指針は「困っている人がいたらまずは助けよう」であり、街頭募金活動や地域貢献活動を業務として位置づけ、すべて出勤扱いとしている。有給休暇とは別に、年7日のボランティア休暇を付与する仕組みが整備されており、毎月何かしらのボランティア活動が年間行事に組み込まれている。(4)能力開発に関する改善電気設備工事業務を行うには、電気工事士、電気工事施工管理技士など、多くの国家資格が必要なことから、同社では従業員に国家資格取得の支援を行い、取得者には手当を支給している。資格取得は昇進の条件にもなっているため、移動式クレーンや高所作業車の免許など、電気工事以外でも業務に結びつく資格取得には補助を行っている。なお、高卒で入社した従業員には、入社後5年以内に電気工事士などの必要な資格を取得するよう指導しており、資格を取得するころに主任へ昇進させている。安全や技術に関する面では、5種類(リーダー研修会Aチーム、Bチーム、幸こう秀しゅう塾、一いち野の塾、社長セミナー)の研修があり、役職や立場に応じてほとんどの従業員がいずれかに所属している。なかでもBチームは新入社員から高齢者までさまざまな年代の18人が参加し、技術的な学習を継続している。レジェンドと呼ばれる高齢従業員3人もBチームに所属し、高齢になっても学び続ける姿勢が若手の手本となっている。(5)健康管理・安全衛生健康管理については、従業員はもちろん、従業員以外にも40歳以上の従業員(パート含む)と配偶者(独身者は母親または父親)に毎年人間ドックを受診させている。また、インフルエンザのワクチン接種費用は会社が負担するが、従業員だけではなく、下請けなどの協力業者にも対象を拡大している。その背景には、すべての働く人が元気で幸せでないと、お客さまによいサービスを提供できないという確固とした考え方がある。協力業者を社外従業員と位置づけ、福利厚生面においても手厚くサポートしている。(6)高齢従業員の声Aさん(70代、男性)は、1971年の入社以来、半世紀近く電気設備工事に従事してきた。現在も第一線で活躍するとともに、技術伝承者として若い世代を育てる先頭に立っている。「当社は60歳でも70歳でも体力が続くかぎり働き続けることができます。同じ仕事・同じ時間ならば基本給は変わりません。70歳を超えても会社から評価されていること、必要とされていることを実感できるのが一番の喜びです」と語る。(7)今後の展望今後の課題として「経営理念の実践をテコとした人材確保と、技術の若年従業員への伝承」を掲げている。人材確保の対応として、50歳以上の方を対象とした求人者の募集、インターンの受入れを行っている。インターンは同社が奨学金の寄付を行う外国人学校から希望者を受け入れているが、今後、高齢従業員がその指導にあたることもあるという。また技術の伝承について、若年者は、既成の道具などで対応できない場合の技術的な工夫や、各現場の状況に応じた動きに対応ができない傾向があるため、高齢従業員にはそういった指導も期待されている。高齢従業員の人間力が存分に発揮されることで「松川一家」の絆は一層強くなり、同社の屋台骨を支える力はさらに強きょう靭じんとなる。「松川一家」は足並みを揃え、新たな課題に向かって果敢に挑戦していく。現在も第一線で活躍しているAさん

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