エルダー2019年10月号
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特集エルダー292019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠ全従業員の経営参画意識向上につながっている。(6)経営スタッフと従業員とのコミュニケーションが密であるため、 職場の雰囲気がよく、従業員の定着率が高い。企業の沿革・事業内容Ⅱ1987年に有限会社アパレルオオタとして創業し、ベビー服の縫製加工を開始した。その後、婦人服や肌着などへ事業を拡大し、業界を代表する大手繊維商社の受注によって成長を遂げてきた。創業期において繊維業界は隆りゅう盛せいをきわめたことから、創業者は勤労意欲のある従業員を年齢や性別に関係なく雇用し、地元からは高齢者が働きやすい企業であると高い評価を得てきた。2代目の現社長と現工場長は創業者の理念を継承し、高齢者にとってより働きやすい職場環境の構築を目ざし、高齢従業員の戦力化を推進してきた。また、1996(平成8)年に外国人技能実習生の受入れを開始、現在も21人のベトナム人が働きながら縫製を学んでいる。市内を代表する縫製業者として生き残りを図るため、だれもが能力を発揮できる職場の実現に向けて、多岐にわたる取組みが行われている。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ従業員92人のうち、60歳以上の従業員は27人で全体の約3割を占め、最高年齢は75歳である。一方、実習生は20代から30代と若く、知識や技術習得への意欲が旺盛であり、同社の最高年齢者が親代わりとして手厚くサポートしている。また、年齢ではなく、技能や能力を評価する制度としている。ここ最近の傾向として、新規学卒者の応募はほぼなく、戦力として高齢者を大いに頼りにしている。また、事情によって退職した従業員の再就職を積極的に受け入れており、業務経験もあることから即戦力となるため、会社としては歓迎している。バブル経済崩壊後は繊維工場の中国移転が相次ぎ、国内の繊維産業が厳しい競争を強いられるなか、同社も創業以来の﹁思いやり型経営﹂から﹁経営追求型経営﹂へのシフトを余儀なくされた。生き残りをかけて業務効率化を追求する必要に迫られ、高齢従業員の雇用を従来の福祉的雇用から戦力としての雇用へ方向転換し、難局を乗り切る手立てとした。業界全体の不況の真っ只中に就任した現社長は、﹁全従業員の多能工化﹂を掲げ、実行力を発揮した。当初は若い経営者の効率化追求への反発があったものの、約10年で経営体制を刷新することに成功。これにより、業務未経験の高齢者でも戦力として活躍できるようになった。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善・定年の廃止2代目経営陣による経営方針の刷新で、全従業員の多能工化を達成できたことにともない、年齢にかかわりなく戦力として雇用できる体制を整えたことや、慢性的に人手不足であることから、雇用上限年齢を定めておく必要はないと判断。労使協議の結果、2019年5月に就業株式会社アパレルオオタ本社

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