エルダー2019年10月号
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2019.1030規則を改定し、定年制を廃止した。・柔軟な勤務体制従来、基本的に従業員全員がフルタイム勤務で統一してきたが、2019年度からは加齢にともなう体力低下や健康状態に配慮し、65歳以上の従業員は、本人の要望に応じて短日・短時間勤務を可能とする制度に改善した。柔軟な勤務体制は、人材確保を望む会社側と、ワーク・ライフ・バランスを重視する従業員側双方にメリットがあり、歓迎されている。このような体制が構築できた背景には全従業員の多能工化の推進があり、急な欠員時にも別ラインの担当者によって補えるため、休暇取得や出勤の調整が容易になっている。・賃金・評価制度雇用形態は、年齢に関係なく全員が正社員である。賃金は時給・月給制度を採用、人事評価は行っていない。(2)高齢従業員を戦力化するための工夫縫製部門は、スラックス、Tシャツ、婦人インナー、婦人アウターで構成され、各ライン15人体制となっている。多能工化推進にあたっては、従来の担当とは別のラインも受け持てるようにワンランク上の作業を修得させる必要があったため、熟練技術を有する高齢者が指導役となって、話合いや実践などの試行錯誤をくり返してきた。その結果、徐々にライン構成員全員の多能工化を実現した。必然的に高齢従業員の知識・技術がほかの従業員に伝承され、高齢従業員の評価や信頼が向上するという副次的効果もあった。・技能を活かした配置高齢従業員はさまざまな形で同社に貢献しており、ベテランとして各ラインの調整役、指導役をになうほか、発注元メーカーへ製品のサンプルを作成・提出する部門は全員高齢者で構成されている。サンプルは会社の顔となるものであり、作成にミスは許されないことから、熟練した高齢従業員が適役であると判断した会社の方針は、高齢従業員自身の技術向上につながっている。・外国人技能実習生の世話役外国人技能実習生が従業員の2割強を占める同社では、その指導役を高齢従業員が担当している。異なる文化や価値観を持った技能実習生が職場になじめるように、仕事上の指導にとどまらず、日常生活においても細やかな愛情を注いでおり、まるで家族のように接して彼らの緊張を解きほぐしている。一方、技能実習生は優秀な人材が多く、縫製に関する専門知識や技術習得に対する積極的な態度に刺激されて、教える側の高齢従業員のモチベーションアップにつながるほか、異文化に触れることで高齢従業員自身の世界観が広がるという相乗効果も生まれている。(3)働きやすい職場づくり従業員の声を反映させ、作業環境の改善に取り組んできた。現場には管理職の目が行き届き、気づいたことがあればライン部門会議などの場で相談して逐次改善する流れが構築されている。縫製作業は一人の不便さが全員の不便さにつながる現場だが、女性の知恵が活きる場でもある。気づいた一人が提案した職場改善案が、工場全体の作業効率改善を実現している。・手元照明の導入高齢者の場合、視力の衰えによってミシンの運針作業が困難・危険になるため、手元を照らすLED照明を導入した。これにより、年齢にかかわりなく運針作業を担当することが可能に高齢者の視力低下を補うために導入したLED照明(ミシンの左側)

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