エルダー2019年10月号
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エルダー41しを浴びてよく日焼けされていました。天候に左右される青果づくりは、日々、野菜の状態に合わせて、病気や消毒などの対応が必要で、子どものように手がかかるといいます。それでも、長年取り組んできており、やりがいでもあるのでしょう、「よいレタスが収穫できたときの喜びは何にも替えられません」と笑顔で語っていました。太田さんは大型免許を所持し、トラクターで行う草刈りや耕作なども担当します。「とにかく広い畑を耕すため、一日中トラクターに乗っていますが、なかなかたいへんですよ」と苦労を語ります。トラクターの使い方を若い社員に教えるのも太田さんの役割のひとつです。トラクターの運転は「楽しい!」と若い社員に人気のある仕事ですが、重く大きな作業装置の着脱など、危険がともなうので慎重な指導が必要になり、神経を使うそうです。太田さんの働きぶりについて松尾社長は「業績への貢献も高く、申し分ない部長です」と太鼓判を押します。健康維持のためにも70歳まで仕事を続けたいと語りました。温和な表情の植うえ木き政まさ和かずさん(70歳)は太田さんと同じ生産部に所属し、正社員としてフルタイムで勤務しています。植木さんは46歳で入社するまでは、縫製加工の会社で営業をしていました。南島原市は古くから縫製業が盛んな地域でしたが、近年は不景気などの影響でかつての勢いをなくしていました。そのため転職を決め、「当時ハローワークにある求人で、一番待遇が充実していた」という松尾青果に応募。営業職として就職しました。植木さんは長年仕入れを担当。近郊の農家に出向いてジャガイモの取引きをしていました。同業他社と競合するなかで、契約が成立したときの喜びはひとしおでした。「何度も農家に顔を出して、世間話などコミュニケーションをとって、うちとけてもらいました」と、地道な営業活動が実を結んだと話します。松尾社長は「誠実で嘘をつかない人柄ですから、農家の人の信頼を得ています。定年後に異動した生産部でも植木さんを班長に抜擢し、若い人を補佐してもらっています」と揺るがない信頼を語ります。生産部での仕事のやりがいは、「種まきから収穫するまでのすべて」といい、すっかり青果づくりに魅了されているようです。「毎日毎日、仕事があることが生きがい」とも話し、健康と生きがいのために80歳まで働きたいと抱負を語ってくれました。事業展開の根底にある経営理念「朝は希望に目覚め、昼は努力に生き、夜は感謝と反省に眠る」という経営理念について、松尾社長は「私たち松尾青果の社員は常に自然と接していて、自然の恵みをお客さまにお届けし、喜んでもらうことを生なり業わいとしています」と話します。「藤澤プランナーの助言をもとに、経営理念を日々の活動のなかで具体的に実践していくために基本方針を策定しました。その一つに、『地方の農村の活性化を支援』があります。今後も高齢化が進む日本の地方農村を支援し、地域農業再生支援という社会貢献活動を通して事業を推進していきます」と今後の方針を語ってくれました。(取材・西村玲)トラクターが刈り切れない雑草を処理する植木政和さん

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