エルダー2019年10月号
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エルダー43強い』といわれたのです」そこで白羽の矢が立ったのが、長年労働組合の幹部として活躍し、中高年問題に関心を持っていた浅井氏だった。だが、スタート当初は社員の本音を引き出すべく面談に臨んでも、「机を叩いて怒る人、途中で席を立つ人など、全然うまくいかなかった」(浅井氏)という。そこで、一念発起してキャリアコンサルタントの資格を取得。面談の前には、面談対象者の上司に人となりについてヒアリングし、うちとける雰囲気を工夫するなど、経験を重ねながらノウハウをつちかっていった。スタートから6年目を迎えるが、面談した社員は延べ1800人に上るという。面談の効果を高めるために﹁キャリアデザイン研修﹂を実施面談を軸とする同社の仕組みは、毎年4~5月に開催される「キャリアデザイン研修」から始まる。期間は1日で、1回の参加者は20~30人。50歳になった全員が参加するので、対象者が300人の場合は10~15回開催される。プログラムは、自分を客観視するためのオリジナル動画の視聴に続き、同社のヒューマンリソース部長が会社のビジョンと方向性について話し、50代社員への期待を熱く語る。その後、講師による講義とグループごとに課題を与えるワークショップへと続く。研修のねらいは、あくまでも面談の動機づけだが、最大の効果を得るための検証を徹底している。取組み開始1年目は、7人の外部講師に依頼したうえで、同社の風土に合う・合わないなどを観察。2年目は3人に選別し、3年目以降はさらに2人に絞った。また、各講師が担当する対象社員やワークショップのクラス分けも、ランダムではなく事前に調整している。「職場には、順調にがんばっている人もいれば、何らかの悩みを抱えている人もいます。それにふさわしい講師と内容を毎回検討しています。また、ワークショップでは、キャリアを選択するための軸となる価値観である『キャリアアンカー』が近い人同士を事前にグループ分けします。昇進することに価値観を置いている人、ワークスタイルを重視している人、キャリア自律に関心がある人など、同じ価値観を持つ人同士なのでワークショップも活性化します。私自身も後ろのほうで研修風景を観察し、参加者が特徴的な発言をした場合はメモを取って、面談の参考にしています。研修終了後は講師と反省会を行い、時間配分やテキストの中身について見直すなど、課題を深く掘り下げながら、意見交換をしています」(浅井氏)企業によっては、研修の最初と最後の部分だけ人事担当者が立ち会うケースもあるが、面談の材料とするため、最初から最後まで見守り、研修中の一人ひとりの言動を浅井氏自身が観察している。研修の最後には参加者全員に「キャリアビジョン」を書いてもらう。ただし「1年後や10年後のことなど、どのように書くかは本人の自由に任せ、漠然とこうしたいと思うことを書いてもらいます。面談までの間にじっくり考えてもらうのが目的です」という。前向きに働けるようになるなら目標が﹁毎朝挨拶をする﹂でもよい全員対象の個人面談は、研修が終わった1~2カ月後の6月ごろから始まる。面談時間は30分~1時間程度。面談では、自分が「こうなりヒューマンリソース部人事・人材開発部門の浅井公一担当課長高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―

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