エルダー2019年10月号
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具体的な変更に先立つ「労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である」として、単なる形式的な同意を主張しているだけでは足りないとされています。出産・育児に関する制度1育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育そのため、合併時の労働条件統一にあたっては、就業規則の変更のみではなく、事前の説明会の開催、特に賃金の減額をともなう場合には、十分な説明を行って同意を取得するほか、減額の程度が大きい場合などには、調整給の支給などの方法による緩和措置を十分に設定するなど、さまざまな配慮が必要になるでしょう。児休業法」)においては、育児に必要な諸制度が定められ、使用者となる企業は、これを遵守しなければなりません。また、労働基準法にも産前産後の休業に関して規定されています。使用者は、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間については、就業させてはならないとされ(労働基準法第65条)、出産後については、育児休業制度として、原則として子が1歳になるまでの間(保育所などに入ることができないなどの事情がある場合には最長子が2歳になるまでの間)について、育児休業を取得させなければなりません(育児休業法第5条、第9条など)。このほか、子が3歳に満たない場合に、労働者が労働時間の短縮措置を求めた場合は、原則として6時間に短縮する措置をとることが求められ(同法第23条)、小学校に入るまでの子を養育している場合、年間5日の範囲で看護休暇を取得することができます(同法第16条の2)。これらの制度の利用を確保するために、これらの制度の利用に対して、不利益な取扱いをしてはならない旨定めています(育児休業法第10条及び第16条の4)。不利益取扱いの種類2厚生労働省が定めるガイドラインにおいては、不利益な取扱いの種類として、解雇、契約の更新回数の制限、退職の強要、自宅待機命令、意に反する労働時間短縮措置、降格、減給、人事考課上の不利益な評価、不利益な配置変更などがあげられています。また、正非正規雇用への切り替えは、育児休業などの利用に対して行われることが禁止されている不利益取扱いに例示されています。合意により行う場合は、必ずしも全面的に禁止されているわけではありませんが、客観的かつ合理的な理由があると認められる自由な意思による同意を得られなければ、契約内容の変更が無効となると考えられます。A2019.1048育児休業後の契約切り替えについて知りたい当社の正社員が育児休業を利用した後、復職する予定です。復職時には短時間勤務を希望しているようなのですが、当社の制度上、短時間の勤務とする場合にはパートタイマーとして、期間の定めのある契約を締結することとなっています。そこで、本人の同意を得て、当該の労働者と有期雇用の労働契約をあらためて締結しようと思うのですが、問題ないでしょうか。Q2

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