エルダー2019年10月号
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エルダー51睡眠時無呼吸症候群中高年の人のなかには、睡眠時無呼吸症候群の悩みを抱える人も少なくないと思います。睡眠が深くなったときに舌の緊張がゆるんでしまうことで息の通り道が狭くなり、いびきが起こって十分な呼吸ができなくなり、また完全に息の通り道が閉塞して息が止まってしまうのが、閉塞性の睡眠時無呼吸症候群といわれるものです。睡眠時無呼吸症候群の症状が重い場合には、夜間の睡眠が妨げられるため、日中の覚醒度が低下し、ミスや事故を起こしやすくなるといわれています。また、高血圧症や糖尿病のリスクを高め、動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞による死亡率が高まることが明らかになっているので、疲労からの回復につながる質のよい睡眠を確保するためにも、睡眠時無呼吸症候群の治療を行うことは、高齢社員の健康確保のためにも重要です。産業医と相談して、スクリーニング※2の実施について検討してみてください。不眠と寝酒ヒトは、50歳以上になると自らの健康状態などを背景として、不眠を訴える人が多くなるといわれています。みなさんの事業所で働いている高齢従業員のなかにも、「最近、夜眠れないので寝酒をしている」という人がいるかもしれません。アルコールは睡眠導入には効果がありますが、睡眠を浅くし利尿作用もあることから、睡眠途中で目覚めることが増加します。アルコールを飲むと、このように睡眠の質が低下するため、熟睡するには逆効果であるといっても過言ではありません。また、「お酒を飲んだ夜にはいびきがひどくなる」という現象に思いあたる人が多いと思います。この現象は、お酒(アルコール)が筋肉の緊張をゆるめることによって、一時的に、睡眠時無呼吸症候群と同じような状態が起こっていると考えられています。高齢社員が寝酒に頼っている場合には、寝酒はただちにやめさせたうえで、産業医と相談のうえ、睡眠薬の使用を検討してみてください。最近の睡眠薬は以前に比べて安全性が高いものが主流になっていますので、適切に使用すれば安全ですし、効果的な疲労回復にもつながるでしょう。※2 スクリーニング……病気のある人を早期発見し、早期の治療や病気のコントロールにつなげるための検査わたなべ・やすよし京都大学大学院医学研究科博士課程修了、大阪医科大学医学部・講師、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・センター長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長等を歴任し、現在は、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム・プログラムディレクター、理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・顧問を兼任。日本疲労学会・理事長。図表 健常者とCFS患者の自律神経系の日内変動(概念図)(覚醒)朝交感神経:健常者副交感神経:健常者ME/CFS患者ME/CFS患者昼夜(入眠)副交感神経が低下傾向活動期回復期出典:筆者作成

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