エルダー2019年10月号
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エルダー57若わか宮みや正まさ子こ 著/中央公論新社/820円+税産業医科大学 編/西日本新聞社/800円+税デイリー法学選書編修委員会 編/三省堂/1600円+税「働き方改革関連法」といえば、労働基準法改正にともなう、長時間労働の是正を目的とした労働時間管理の強化が思い浮かぶだろう。その一方で、労働安全衛生法の改正によって、「産業医・産業保健機能」が強化され、長時間労働やメンタルヘルス不調などにより健康リスクが高い状況にある労働者を見逃すことがないように、産業医による面接指導や健康指導などが確実に実施されることとなった。このように企業の人事労務担当者としても、改正後の労働安全衛生法令の正確な理解が求められるが、同法は多種多様な労働者の安全と健康に関する事項を総合的に規制しているため「複雑でわかりにくい」ともいわれている。そこで本書は、第1章「労働安全衛生法の基本」、第2章「工事現場の安全管理」、第3章「健康管理・メンタルヘルス」という簡潔な構成を取り、労働安全衛生法の基本的事項や実務上で最低限必要となる法令の知識が平易な言葉で解説されている。さらに働き方改革関連法にともなう、労働安全衛生法の改正内容も反映されている。新任の人事労務担当者も理解しやすく、必要な知識を得ることができる入門書であり、一読をおすすめしたい。高齢者、女性、外国人など多様な人材の活躍が期待されるなか、高齢者については、70歳までの雇用が検討され始めている。職業人生が長くなり、また、年齢にかかわらずいろいろな事情を抱えた人が働く職場が増えて、働く人の心身の健康管理や職場環境の整備がますます重要になってきている。一方で、AI(人工知能)などの技術革新により、産業構造や働き方にさまざまな変化が生じている今日でもあり、従来の枠組みや考え方だけでは対応しきれない職場の課題が増えつつある。本書は、産業保健専門職の養成にたずさわっている産業医科大学の教授陣が、多くの職場で健康面の課題とされている事例を取り上げ、対策を解説したもの。「ストレスの正体」、「腰痛」といったよく見聞きする話題や最近注目されている「健康経営」、「睡眠負債」、「労働寿命」といった話題もある。2019年4月施行の働き方改革関連法で産業医の権限が強化されたことや、産業医・保健師の役割などにも触れている。西日本新聞に連載された記事をベースとしているので、わかりやすい表現でまとめられており、人事労務担当者をはじめ、働く人の健康問題に関心を持つ多くの人に役立つだろう。本書の著者・若宮正子さんは、60歳からパソコンを独自に習得し、銀行を退職後は同居する母親の介護をしながら「パソコン通信」で世界を拡げ、友だちも増やした。その後、シニア世代向けサイトの創設に参画し、84歳の現在も副会長を務める。また、NPO法人の理事として、シニアへのデジタル機器普及にも注力している。向学心旺盛な若宮さんは、80歳過ぎからプログラミングを学び、お雛ひなさまをテーマにしたゲームアプリを開発。すると、世界最高齢のアプリ開発者として一躍有名になり、国際的な会議に招かれたり、政府の「人生100年時代構想会議」の最年長有識者メンバーに選ばれたりして、「人生が激変した」という。貴重な経験は、本誌2018年8月号「特集」でもご紹介した。本書は、興味があることや憧れていたことを、定年後から「頑張らない独学」で始めた著者の体験や実感、やりたいことの見つけ方などを軽やかな文章で綴ったもの。独学のコツは、「楽しいことから始める」、「ノルマを課さない」など。さらに、変化の激しいこの時代をはつらつと生きていく学びとして、「理科と現代社会の学び直し」を提案する。中高年社員にも役立つ、ポジティブな生き方のヒントが詰まっている。事業リスク解消!労働安全衛生法のしくみ産業医が診みる働き方改革独学のススメ頑張らない! 「定年後」の学び方10か条新任担当者も理解しやすく、必要な知識が得られる入門書働く人の健康にかかわる事例をあげて、その対策をわかりやすく解説世界最高齢アプリ開発者に教わる、いくつになっても楽しく生きるためのコツ

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