エルダー2019年10月号
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2019.104株式会社高倉町珈琲 代表取締役会長横川 竟さんづらいのですが……(笑)。横川 私は、サラリーマンをモデルとした会社や社会の仕組みが、日本の会社や社会をダメにしてきたと思っているのです。少なくとも私が求めている仲間は、商売人であってサラリーマンではない。定年制というのはサラリーマンの典型的な仕組みですね。 サラリーマンと商売人とはどう違うか。サラリーマンはいわれたこと、決められたことを、期待された通りにやりこなすことが求められます。それに対して商売人は、すべてのことを自分で考え、行動し、その結果をすべて自分で引き受けます。サラリーマンは決められた定年が来たら退職しますが、商売人は何歳で引退するかは自分で判断して決めます。サラリーマンは、そのときやるべき仕事をやりますが、商売人は将来を見て、いま何をすべきかを考えます。 60歳を過ぎても活躍できるかどうかは、それまでの長い年月を、どのような意識で働いてきたかにかかっています。サラリーマンの意識で、いわれたことだけをやり、いまのことだけを考えて仕事をしてきただけでは、周りからお荷物としか受け止められないような存在になりかねません。若いうちから、「自分はどのように役に立つ存在になれるか」、「そのためにどのような能力を磨くべきか」と考え、努力を怠らないことです。―ベテランの技術や知識を若い世代に伝えていくことも、高齢者の重要な役割ですね。育ってきた時代の違いからくる世代間のコミュニケーション・ギャップに悩む高齢者もいるようです。横川 生まれたときからインターネット環境があった世代がもう30代だと考えると、そんな悩みもあるかもしれませんが、根底にある商売の思想は変わらないので、それほど深刻な問題とは考えていません。むしろ、インターネット環境が発達したことによって、会社がなくても、工場がなくても、いい換えればサラリーマンにならなくても商売ができるような時代になり、そのような技術を使いこなす若い世代から新しい商売が始まりつつあることに期待感を持っています。―いまなお商売について情熱的に語られる横川さん。まさに「生涯現役」のお手本だと強い刺激を受けました。横川 私は「いつも新鮮、いつも親切」という言葉を大切にしています。心身ともに「いつも新鮮」、つまり新しいことに興味を持ち続ける。年を取ると体は多少弱りますが、心は年を取りません。そして「いつも親切」というのは、何をすればだれかの生活をより豊かにすることができるかを、いつも考えて行動する、ほかの人の役に立つということです。どちらも「いつも」そのようであれ、というところがポイントです。健康や体力を維持するために特別なことをしているわけではありませんが、このような心構えを忘れずに生きてきたので、あまり年齢を意識せずに考え、行動できているのではないでしょうか。「サラリーマンではなく商売人」働く意識のありようが問われる(聞き手・文/労働ジャーナリスト 鍋田周一撮影/中岡泰博)

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