エルダー2019年11月号
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2019.1110改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善 ・定年制度2007年4月に、まず事務職に65歳定年制を導入し、翌年1月には、介護職員などにも導入した。当時は定年引上げの法的な義務はなかったが、中途採用者や永年勤続者などの豊富な経験を長く活かせる体制を考えたときに、60歳定年制が壁となったため、導入を決定。定年後も慣習で希望者には健康状態や能力に応じて、年齢に上限のない継続雇用を実施してきた。パート職員は、希望する者は年齢に上限なく継続雇用することを就業規則に定めている。また、長く働き続けることができるように、本人や家族の要望に応じた短時間・隔日勤務など柔軟な勤務体系も導入している。また、年2回の健康診断の実施やストレスチェックの実施に加えて、「元気であれば希望する者はいくつになっても働ける」と、理事長や施設長から周知されており、定年後も継続雇用することが慣習として根づいている。・高齢者の職域拡大高齢者の介護や障害者の支援、子どもの世話などは、体力が必要とされる業務であるため、年齢を重ねて従来の業務ができなくなっても、無理をせずにできる業務に移れるように、高齢職員でも従事可能な職域の拡大や仕事の創出を進めてきた。また、介護職員の採用がむずかしい時代になってきたため、スタッフ一人あたりの負担を軽減する改善策を現場と一緒に検討した。具体的には、介護職員が行う業務と専門知識や経験がなくてもできる業務に分け、シーツの交換や室内の清掃、食事の準備などについては介護職員以外のスタッフに担当してもらうこととした。その結果、介護職員の負担が減って本来の仕事に専念できるため、ミスの防止や無駄な動きの削減などの効果があり、サービス利用者はもちろん利用者の家族にも、いままで以上にきめ細かなサービスが可能となった。それにともない、施設の評価も向上して入居率もアップし、職員の定着率の改善、さらには収益の増加や総人件費の削減にもつながっている。・施設設備などの改善施設開設時から使用していた「旧式のベッド(昇降を手動で行う)」は、介護の際、腰や身体全体への負担が非常に大きいため、2018年から2年計画で、100床あるすべてのベッドを電動ベッドに切り替えている。また、車椅子の方用のリフトも導入した。ボタン一つで自由に上下動ができるため、介護職員が無理な姿勢で利用者をサポートすることがなくなった。腰痛が緩和され、腕や肩の疲れを軽減できるため、職員からはとても好評である。(2)資格取得やキャリア形成支援の取組み「人材は人財」と考える同法人では、「介護福祉士」や「ケアマネジャー」などの資格取得を目ざす職員をサポートしており、社会福祉充実計画※1の職員育成事業において、資格取得のための研修費用や受験料などを一定額支給している。また、資格取得後は介護福祉士で3万円、ケアマネジャーで5万円など、資格の難易度に応じて報奨金を支給している。費用を負担してもらえ、資格取得時には手当もあることから、※1 社会福祉充実計画…… 社会福祉法人が保有する財産のうち、事業継続に必要な「控除対象財産」を控除してもなお一定の財産が生じる場合に、「社会福祉充実財産」を明らかにしたうえで、社会福祉事業などに計画的に再投資をうながすとともに、公益性の高い法人として説明責任の強化を図るために策定するもの2018年から導入した電動昇降ベッド。職員の腰痛や腕の疲れが大幅に軽減された車椅子用のリフト。職員の負担軽減につながる

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