エルダー2019年11月号
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特集エルダー112019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅡ資格取得を目ざそうとする意欲を持つ職員が増えてきている。(3)意識・風土面の改善今後介護職員が高齢化して、体力などの面で現在の業務がむずかしくなることを想定し、50代の指導的立場の職員を「介護実技支援アドバイザー」として養成するスキーム(やり方、仕組み)構築を進めている。長年仕事をしてきた高齢職員が介護実技の支援を行い、若手職員や外国人労働者を育てることで、特定の高齢職員が特定の若い人材などを育てるペア就労を実施することにもなり、いわゆるメンター制度※2も実現した。この取組みにより、実際に新規入職職員の定着率がアップしている。教える側の高齢職員にとっても、教える喜びや問題・課題を知ることができ、自身のスキルアップにつながっている。これが職員の教育訓練とキャリア形成にもつながり、若い人材の育成や技能の承継を円滑に行うことが可能となった。(4)健康管理体制健康診断は、同法人敷地内にある医療法人が運営するクリニックで、職員全員が毎年2回ずつ、同法人の負担で受診している。業務時間内でも敷地内で受診できるため、職員からも好評である。50人以上の事業場ごとに義務づけられているストレスチェックも、50人未満の施設も含めて全職員を対象に実施している。また、健康診断の結果を受けて、部門ごとに方法は異なるものの、検査結果にともなう受診の確認を必ず行っている。毎年2回の健康診断は、深夜業務従事者を除けば法定以上の頻度であり、職員の健康に配慮した取組みであると自負している。この取組みにより、いままで発生していた突然の病気や重じゅう篤とくな病気の発症が減少し、想定していない欠勤や遅刻なども激減した。その結果、職員のローテーションの突然の変更がなくなり、勤務計画通りに仕事が回るようになった。高齢職員からは、「高齢になると急な体調不良によって職場の同僚に迷惑をかけ、肩身の狭い思いをしていたが、安心して仕事ができるようになった」という声もある。(5)従業員の反応・声神かみ山やま悦えつ子こさん(65歳、女性)は、勤務13年になるベテランスタッフ。長い間非正規職員として働いてきたが、正規職員として働きたいと決意し、50歳を過ぎてから介護福祉士の資格を取得し、同法人に就職した。養護老人ホームで4年、障害者支援施設で5年働いた後に、現在は訪問介護事業所に異動し、サービス提供責任者として働いている。「違う部署で働くことも無駄な経験にはなりません。施設によって利用者もいろいろです。コミュニケーションのとり方や、自分の身体の使い方を工夫するのがとても勉強になります」と神山さん。利用者だけでなく、スタッフからも頼りにされている神山さんは、今後について「私のような年齢の者がいることで、若いスタッフと利用者の間を円滑につなげられるような気がしています。自分が重ねてきた年齢を活かせることと、利用者から『ありがとう』という言葉が聞けることが一番のやりがいです。幸いまだ健康ですので、可能であれば70歳くらいまで、いまの職場で介護や福祉関係の仕事を続けたいです」と話してくれた。(6)今後の展望社会福祉事業を柱に、さまざまな施設を運営している同法人は、今後も先進的な取組みを行うことで、栃木県南地域だけでなく、県央や県西地域、さらには隣接する茨城県の他企業へと波及していくことも期待している。それにより、地域住民の利便性と福祉環境が好転し、自社の事業もさらに発展するとの思いからだ。利用者の心に寄り添うサービスを充実させていくために、全社をあげての挑戦が続く。※2 メンター制度……会社や配属部署における上司とは別に指導・相談役となる先輩職員が新入職員をサポートする制度のこと神山悦子さん

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